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第1378話

感染症が流行ってから、ストレスのせいか三条の淫らさが増した気がする。 そうやって貯め込んだものを発散しているみたいだ。 良い事なのかと聞かれれば、興奮はするがあまり良くはないのではないかと思う。 ただ、実際、淫らな恋人を目の前にすると理性なんてものはとてもちっぽけなものへとかわるのだが。 「正宗さん、お疲れですか?」 「大丈夫だよ。 もうすぐ卒業式だろ。 その準備が色々あるだけだ。 疲れたとかそんなんじゃねぇよ」 スイッチが入っていなければ、この気遣い。 優しくて頼りがいのある恋人だ。 自分の顔を覗くように見るその顔は、心配そうに眉が下がっている。 折角のデート中に考え事なんて無粋だった。 意識をしっかりと三条へと向ける。 「それとも、会いてぇのは俺だけか?」 「ちがうっ。 あ…じゃなくて、俺もです……」 「なら、良いじゃねぇか。 な」 キャップの上から頭を数度ポンポンと撫で、そのまま手を繋いだ。 絡まる細い指。 殊更細っこい小指を軽く揺らして三条の暮らす町を歩く。 散歩だって、十分な気分転換の1つだ。 だけど、そうだな。 以前の“当たり前”が染み付いた身体では今の生活はしんどいばかり。 もっと三条の心を軽くしてやりたいが、自分になにが出来るだろうか。 なにも出来やしないと分かっていても、そうしたいと思うのはそれ程までに恋人が大切だから。 「あ、あそこの自販機で飲み物買って良いか?」 「はい。 コンビニじゃなくて大丈夫ですか? 遠回りになっちゃいますけど、こっちの道に行くとコンビニの方に行けますよ」 「ん、そうだな。 コンビニの方が種類あるか。 案内して貰っても良いか? 肉まんも食おうぜ」 「素敵ですね」 「うし。 じゃあ、行こう」

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