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第1380話

「ご馳走さまでした」 「ご馳走さま。 美味かったな」 「はいっ。 美味しかったです。 あったかくなるとなくなっちゃうから今のうちに食べておかないとですね」 そうだな、と笑いながら口の中の餡子を流すようにお茶を飲む恋人。 ゴクッと嚥下する度に上下する喉仏が色っぽい。 男だなと思うのと同時に、なぜかいやらしい姿を思い出してしまう。 甘ったるいのは口の中だけではない。 横顔のラインもすごく繊細で綺麗だ。 見惚れていた意識をこちらへとしっかり戻し、話さなくてはいけない事を口にする。 「あの……、シャツなんですけど」 「あぁ、遥登の精液拭ったやつか?」 「そ、うです……。 本当に乾いてしまってますし、その…結構においもするんですけど本当に使うんですか…?」 「うん。 帰ったらすぐ使う」 そんな真っ直ぐな目で言われると、逆に恥ずかしがっているのがおかしいのかと思うくらいだ。 リュックの中からソレを取り出し、そおっと差し出す。 でも、やっぱり恥ずかしい。 洗濯をしてから返したい。 「ありがとな。 遥登のにおいかぁ。 今嗅いでも良いか?」 「え……」 「あー、でも、ここで勃ったらやべぇな」 かぁっと赤くなる顔をどうする事も出来ない三条はマスクを更に上げて顔を隠した。 そんな事をしたところで、の話だとしても少しは気持ちが和らぐ気がする。 あくまでも気がするだけ。 「交換だって言ったろ。 俺の服持ってきたけど、いらねぇ?」 「……ずるいです」 「知らなかったか」 ほら、と手渡されたのは長岡の部屋着。 それも、寝る時に好んで着ているもの。 「っ!」 「ははっ、嬉しそうな顔。 これ着て寝たから結構におうと思うんだけどなぁ」 「……今回だけですよ」 それから返ってきた自分の服を受け取り顔を埋めた。 長岡のにおいがする。 腕の中で寝ていた時のにおい。 すごく良いにおいだ。

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