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第1381話
伸ばした手で服に顔を埋めている頬を撫でた。
車内はあたたかいが、まだ少し冷たい。
だけど、自身の指の方が冷えていたのか三条は肩をピクリと跳ねさせて此方を見た。
やっと目があった。
「びっくりした…」
「本人が目の前にいるのにシャツに夢中かよ。
妬けんなぁ」
「妬けますか…?」
当たり前だろと顔に書いたまま、頬からマスクのゴム紐を辿り耳へと指を滑らせスリスリと擦る。
擽ったいだけではなく、三条の表情筋が動いた。
「笑ってんだろ」
「……ちょっとだけ。
だって、正宗さんが妬いたんですよ。
嬉しいです」
「恋人妬かせて嬉しいってやべぇぞ」
ま、その気持ちは分かるがな。
嫉妬とは、それだけ自分に気持ちがあるという事。
1番分かりやすい興味のカタチだ。
「シャツの方が良いか?」
「正宗さんが1番です」
子供のような独占欲ごと抱き締めてくれる愛おしい恋人。
あたたかな熱にそれは溶かされる。
じっくり身体の芯から、子供体温があたためてくれる。
長岡は目を閉じ、サラサラした髪に頬を寄せた。
「大好きです」
「シャツよりかよ」
「シャツよりです。
なによりも、正宗さんが好きです」
「嬉しいな」
学生達、子供達を守る為にまだまだ踏ん張らないといけない。
目下に迫った卒業式。
入学試験。
それられを例年通り執り行えるようにするのも教職員の仕事。
だけど、同じ条件の大人だって疲れる時がある。
それを恋人は癒してくれる。
会えるだけ、話すだけ。
以前よりずっと短い僅かな時間でも自分にとって必要な時間だ。
こんなにも恋人の存在が大きくなるなんて。
でも、それもそうか。
「正宗さんが大好きです」
「俺も、遥登が大好きだ」
家族になったんだから。
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