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第1383話

離れがたいとはこの事だ。 三条の私服を借りた。 貸していた服も精液で汚して貰った。 車内でイチャ付きもした。 それでも、帰したくないと思ってしまう。 自宅に帰さないで、連れて帰りたい。 朝までに帰せば……なんて、悪い事を考えてしまう。 なにかあったら、悲しむのは三条の方なのに。 マスクのゴムが横切る頬や耳を指の背で撫でると、撫でられた柏や蓬のような顔をした。 嬉しそうで、どこかうっとりした可愛い顔。 20歳の男がこんな無邪気な顔をする。 三条はそういう子だ。 だからこそ、守りたい。 「ふへっ。 擽ったいです」 「好きなくせに。 冷たくねぇ?」 「平気です。 それに、冷たいと正宗さんの手ってすぐに分かります」 にこにこと屈託なく笑うこの顔をこれから先も見ていたいから、今日は素直に帰宅させる。 まだまだ“これから”は長いのだから。 今、離れがたい分だけ……それ以上に一緒にいる。 「正宗さん、大好きです」 自身の手にあたたかなそれを重ね、数年前まで照れていた言葉を真っ直ぐに伝えてくれた。 あんなに恥ずかしがっていたのが懐かしい。 だけど、あの頃と全く変わらない気持ちが伝わってくる。 簡単に口に出せるようになったと言っても、決して気持ちが緩くなったとは思わない。 変わらず重さのある言葉だ。 外灯の影になるように背を向けながら細い身体を抱き締めた。 「俺は愛してる」 「今日は、こんなに沢山触れて良いんですか」 「ん。 最近減ってきてるからな。 特別だ」 じゃあ、とばかりに三条の手が背中に触れた。 この子がいるから頑張れる。 「風呂出たら、湯冷めしないようにな。 それから、水分も摂れよ」 「はい。 明日も楽しみですから体調はしっかり整えます」 「ん。 楽しみだな」 三条はしっかりと頷いた。 これで明日も楽しみな訳だけだが、でも、やっぱり離れがたい事には代わりなかった。

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