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第1389話

胸がドキドキと騒ぐ。 隣で車を運転している長岡にまで聴こえてしまっていそうだ。 「トイレ大丈夫か? ちょっと寄り道すんぞ」 「え、大丈夫ですけど……でも、何処へ…」 「俺も遥登の顔見てぇから、どっか止まる」 グンッと体温が上がるのが分かった。 真っ直ぐな事は、そのまま素直に胸を衝く。 「運転してたら手も触れねぇだろ。 車通りが少ないっつっても前から目ぇ離せねぇし。 少しだけ遥登に触りたい」 「俺から触るのは……」 「俺が我慢出来なくなる」 サラッと視線を流され、その色気にクラクラする。 これから、何処かに停車し2人っきり。 触りたい。 長岡の方から触りたい。 なんて、頭の中で言葉がグルグルと駆け回っていた。 同時に嬉しいと思う。 触れられたい。 2人っきりで近所の人や知り合いに見られるかもとうい不安や人目を気にせずにいられる。 教員の長岡を守りながら、自身の欲も満たせる。 シートベルトを掴み心を落ち着かせようと努めるが意味はない。 今日を楽しみにしてた。 ドライブデートも楽しみだった。 子供みたいにお菓子を買い、飲み物を選び、そうして行うデートはとても楽しい。 だけど、以前のように触れられないのが腹立たしい。 言葉通りに同じ物を食べられないのがムカつく。 若いからではなく、好きな人とだから共有したい。 それが、ずっと出来ていないのが嫌だった。 教師と生徒の関係だから出会えたのに、それが足を掴む。 でも、それは長岡も同じで、触れたいと思ってくれている。 我慢をしてくれている。 きちんとそれを口にしてくれる。 だからこそ、安心出来た。 独り善がりではないと、愛されていると。 「…」 「っ!」 そっとコートの裾を握ると長岡はハンドルを切った。 真っ暗闇の中、長岡の愛車は土手へと到着した。

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