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第1390話
土手と言っても、三条の自宅近くのそれとは異なり、キャンプが出来る広い芝生敷きの空間や、スケートボードの練習場、バスケットコートから野球コート。
それだけには留まらず、河川敷に近い所は田畑になった有意義な空間だ。
あちらも桜が綺麗で散歩にも良いが、こちらは昼も楽しそう。
流石に雪解け頃にキャンプをしている人も居らず、スケートボード場も同様に雪が残るだけ。
多生の暗さは承知の上だ。
「我慢出来なくなるっつったろ」
「俺だって触りたいです…。
我慢してるのは同じです」
理解している。
三条にだって欲はある。
当たり前の感情だ。
暗がりを良い事に、シートベルトを外すと隣へと手を伸ばす。
「っ!?!?」
マスクの上から顎を掴みキスを意識させる。
だったそれだけの事で顔を生娘のように真っ赤にさせた。
こんな初な反応をする反面、時々すごく大胆だ。
「ま…正宗さ…っ」
わざと首を傾ければこの反応。
肩を上げて全身に力をいれている。
多分、無意識。
あ゛ー、すっげぇ可愛い
それでも目を逸らせないでいる。
マスクをズラしてもしないでキスなんて出来る筈ないと、優等生の三条なら分かる筈なのに。
拳1つ分まで近付くと、綺麗な目がすぐ目の前でソワソワと動いた。
その目を見詰めながら目を細める。
「仕返し」
「っ!」
三日月の形をした唇はマスクで隠されていても、恋人には丸分かりで。
「…あ…今のは狡いです…。
すごくドキドキして……えっちぃ……」
「気に入った?」
「そういう話では……」
「じゃあ、もうしねぇぞ」
「……してください」
素直な良い子の頭をよしよしと撫でながら長岡はご満悦でいた。
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