1391 / 1502
第1391話
地元の土手とは違い、遊ぶ事の出来る土手。
芝生敷きのキャンプ地やスケートボードの練習場。
野球にバスケットボールの練習も出来て羨ましい。
だけど、桜が咲き誇るのは地元だ。
それだけは地元の方が誇れる。
そんな緑地─雪で緑はかくれているが─脇の駐車場に、恋人の愛車は停車した。
「我慢出来なくなるっつったろ」
「俺だって触りたいです…。
我慢してるのは同じです」
触れたい。
好きな人に触りたい。
それは、ごく当たり前の感情だ。
だって、触れられるのは恋人の特権だろ。
暗がりを良い事に、シートベルトを外すとこちらへと手を伸ばしてきた。
「っ!?!?」
だけど、その手は自身を抱き締めたりはしない。
マスクの上から顎を掴んできた。
まるでキスをする時のようで、ドキッと心臓が跳ねた。
心拍数が上がっていくのも分かる。
「ま…正宗さ…っ」
首が傾けられ、髪がサラサラと溢れた。
グッと色気の増した恋人の顔が近付いてくる。
や、ばい……
顔が良い……
それでも目を逸らせない。
いや、逸らしたくないんだ。
端正な顔が拳1つ分まで近付くと、綺麗な目が細められる。
「仕返し」
「っ!」
悪戯が成功した子供みたいに無邪気で、更に艶やかささえあるその顔の色っぽいこと。
口から心臓が出るかと思った。
「…あ…今のは狡いです…。
すごくドキドキして……えっちぃ……」
「気に入った?」
「そういう話では……」
「じゃあ、もうしねぇぞ」
「……してください」
いつもより素直に頷くと、頭をよしよしと撫でられた。
まるで子供みたいだ。
だけど、嬉しいのも本当。
ともだちにシェアしよう!