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第1393話
お菓子を食べていると、ふ、と隣の恋人が笑った。
「?」
「ほんと、美味そうな顔して食うよな。
その顔、すげぇ好き」
破壊力満点の笑顔に胸がぎゅぅぅっと締め付けられる。
好き。
頭の中はそれでいっぱいだ。
「本当に、美味しいですから…」
年中バカップルみたいで恥ずかしい。
赤くなった顔を隠そうとマフラーを引き上げる。
それを阻止する事もせず長岡は満足そうににこにこしていた。
だけど、三条も満更ではない。
ブンッと尻尾が揺れる。
「春休みになったら、少しは気軽になるし部屋来るか。
俺もその顔させてぇ。
それに、コーヒーも飲んで欲しいしな」
「あ、はいっ」
「遥登の好きそうなお菓子も用意しとく」
「じゃあ、俺も持って行きます」
「なら、また遥登が作ったやつが食いてぇ」
「そんなので良いんですか?」
「そんなのじゃねぇよ。
遥登が作ったのが良いんだよ。
ぜってぇコーヒーと合うだろ」
長岡がつくってくれる小さな約束。
それは三条の心を保つ為に必要なものだ。
真面目にしている人程割に合わないこの世の中で、恋人はきちんとそれを評価し甘やかしご褒美をくれる。
蕁麻疹も良くなり肩の引っ掻き傷も意識してしないようにしている。
それを見たら長岡はどんな顔をするだろうか。
まだ気軽にセックスが出来る訳ではないので、裸を晒す事はなさそうだがきっと頬や頭を撫でてくれる筈だ。
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