昼間は沢山の人が働く町。 沢山の人が学校に通う道。 だが、今は真っ暗で往来には誰もいない。 まるで世界の果てだ。 だけど、カーテンの隙間から漏れる光や、２４時間営業の店舗を見付けるとそんな事はないのだと思う。 本当に２人っきりになれたらなにをしようか。 考えるだけなら許されること。 本を読んで、コーヒーを飲んで、舌がピリピリと痛むカレーを食べて、昼寝をしたい。 それから、一緒に寝て、目覚めたら１番に長岡の顔が見たい。 自分も大概欲深い。 だけど、長岡ならきっと笑って“そうしよう”と言ってくれる。 “全部しよう”と。 大きくて深くて、優しくて。 そんな長岡が大好きだ。 理由なんてない。 けど、好きな理由を正確に言葉に出来る人の方が少ない筈だ。 好きだから好きなんだ。 愛おしいと思う気持ちが大切。 長岡を見詰めるその目が好きだと伝えている。 「お、すき家。 松屋もあんじゃねぇか。 どっち行くか迷うな」 「本当だ。 これは迷いますね」 「どっちが好きとかあるか？」 「どっちも美味しいです」 「ははっ。 どっちも美味いよな」 そして、長岡の目もそうだ。 学校にいる長岡とは違い、やわらかくて愛おしい色を隠さない。 同じ気持ちなのが分かる、その目が大好きだ。 「ハンバーガーとかも迷うよな。 あのぺちゃってしたパンが良いとか野菜多い方が良いとか。 ほら、遥登達、テスト明けによくモフ行ってたろ。 あれ思い出してテスト明けにモフ食いたくなんだよ」 「テストのご褒美でしたから。 新作もチェックして、よく食べてました」 「デートん時も食ったよな。 また食おうぜ。 買ってくから」 「はいっ」 いつの日か、この感染症の事も過去の話に出来るだろうか。 そうなったら、その時も長岡と一緒に笑って消化したい。