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第1396話
自宅近くへと到着した自動車。
そこから降りてくる人はない。
降りたくないと視線を下げると隣から声が降ってくる。
「もう少しだけいてくれるか」
「良いんですか…?」
「俺がいて欲しいんだよ。
我が儘に付き合ってくれ」
あと少しを何度繰り返しても慣れなくて、いつも寂しくなってしまう。
それを悟る長岡の気持ちに今日も甘えた。
なんともいえないしあわせな気持ちが身を包む。
まだ長岡と一緒にいられる。
ほんの5分でも良い。
本当に嬉しい。
「我が儘じゃありません。
俺も、そうしたいです」
「ありがとな」
感謝するのは自分の方だ。
我が儘をあまり口にせずとも顔に出してしまっているはずだ。
それなのに、迷惑そうな顔もせず長岡はいつも快く受け入れてくれている。
やっぱり大人で大きな人だ。
「今日も楽しかったです。
お菓子も美味しくて、今度は自分で買います」
「そんな気に入ったのかよ」
「俺の好きな味でした」
「だろ。
遥登の好きな味だと思った」
そんなに分かりやすいかと聴けば、何年付き合ってると思ってるんだと笑う。
高校1年の冬から4年。
長くて、過ぎてみればあっという間の4年。
その間に食の好みまでばっちり知られてしまっていた。
だけど、それは三条も同じ。
長岡の好みの味を理解している。
ウインナーの入ったケチャップライスは野菜を入れ甘味があった方が食い付きが良い。
コーヒーはすっきりした味わいを好む。
甘い物も好きだが、甘過ぎるのは好まない。
案外チープな味を好む。
一緒に過ごした時間の分だけ沢山見られた長岡正宗の姿。
学校で沢山の時間を一緒に過ごしてきた長岡先生とはまた違う。
1人の人てしていられる時間でしかする事が出来ない特別。
「今度は桜探しにドライブしようか」
「はいっ」
もっと知りたい。
まだまだ知りたい。
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