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第1397話

時刻は既に入浴を終えている時間。 今日は、いつもより早くからデートをしていたのでいつも以上に離れがたい。 何回目のデートだってそうだ。 最後に手に触れ、熱を分けて貰う。 冷たくて大きな手。 だけど、ちゃんとあったかい。 言葉を交わすこともなく、指に触れ気持ちを伝える。 口を開けば、このまま2人でいたいと長岡を困らせる事を言ってしまう。 帰りたくないと言えばもう少しを伸ばしてくれるだろう。 だけど、それはしたくない。 マスクの中で唇を噛んだ。 言葉を飲み込む。 簡単な事だ。 ごくん、と飲み込むだけ。 それなのに、やけにその言葉は重くて苦かった。 指輪に触れる指。 外灯の光を受け、目元に影を落とす睫毛。 すべてが愛おしさに溢れている。 三条だって長岡を守りたい。 ウイルスからも不満で誰かを傷付ける人達からも。 その為なら、目を閉じる事もする。 「……そろそろ、部屋に戻ります」 「ん。 気を付けろよ。 またな」 どちらも離れがたい。 最後の最後まで触れていた指先から熱がひいていくようだ。 重たい足を外にやり、地面を踏みしめる。 「あ、遥登」 ドアを閉めようとした手を制す声に運転席を覗くと、綺麗な目が真っ直ぐに此方を見ていた。 「俺の夢みろよ。 会いに行くから」 「はいっ」 恋人から分けて貰った孕んだ熱は暫く引かない。

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