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第1406話
調味されたうどんスープに、片栗粉を混ぜたたまごを溶き入れていく。
ボコボコと揺れる湯のお陰でフワフワと広がる様を見て、隣の三条はにこやかだ。
このふにゃふにゃした表情は何度見ても良い。
何度見ても、最高にしあわせな気持ちになれる。
「ふわふわですね!」
「こんなん誰でも作れるだろ」
「ふわふわですよ。
それに、正宗さんが作ってくれたのを食べれるのは俺だけですよ。
贅沢です」
「そういうとこだぞ」
本当にそういうところだ。
言葉1つで、人をしあわせにする。
表情1つで、人を豊かにする。
俺の恋人はそういう子だ。
自慢の子だ。
今日は会えなかった分以上に甘やかすつもりなのだが、もうすでに自身が甘やかされている。
「あと、うどんチンするだけだけど、あとから食うか?」
「え、それは構いませんけど。
正宗さんは腹減ってませんか?」
「大丈夫だよ。
先にコーヒー飲んでも良いか」
「はい」
先に用意しておいた揃いのマグに注がれた褐色。
2つ並んでいるのがとても嬉しい。
もう少しそれを眺めていたいが、折角三条が淹れてくれたコーヒーだ。
冷めない内に手を伸ばす。
「いただきます」
苦く香ばしい味が口をいっぱいに満たす。
「うめぇ」
「良かったです。
俺も、いただきます」
いつもは甘くするそれを三条はそのまま口にした。
「香りがやばいですね。
美味しいです!」
「やばいだろ。
この豆美味いんだよ。
けど、今日は1段と美味い」
その言葉の意味をすぐに悟った三条は、嬉しそうにはにかんだ。
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