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第1408話
アイスクリームを掬うのに使ったスプーンでそれを口へと運べば、更なるしあわせが三条を襲う。
コーヒーの味は勿論美味しいが風味が加わると表情を変える。
バニラの甘い香りと風味。
ガムシロップを足さなくても良い甘さがたまらない。
2杯目のコーヒーは、しっかり甘味として楽しんでいた。
「んーま。
しあわせです」
「美味いな」
やっぱり甘い味の方が反応が良い。
やはり食後の甘味扱いなのだろうか。
どちらにせよ、嬉しそうで良かった。
長岡も同じものを啜りながら、似たような顔をしている事に気が付いていない。
「アイス、ハーゲンダーツだともっと美味いんだろうな」
「高いアイスは狡いですよ。
なんでも美味しくなります」
「遥登が喜んでくれんならチートだって使うぞ」
「甘やかし過ぎですよ」
自分なしでは生きられないようにしたい。
そうなれば、少しは満たされるだろうに。
なんて、狂気じみた事をコーヒーと共に飲み込んだ。
長岡だって、三条の交流関係まで口出しするつもりはない。
友人は大切だ。
家族も。
仕事だってそうだ。
夢を叶えるべく真っ直ぐに進む姿を見ていて、それをぶった切るような事はしたくない。
それでも、どうしたらこの子の頭の中を自身でいっぱいに出来るだろうと考えててしまう。
骨の髄までベタ惚れだ。
癖のない真っ直ぐな髪─毛先─にそっと指を通した。
「飲み終わってからで良いんだけど、ちょっと頼みたい事があって。
良いか」
「はい。
飲んでからで大丈夫なんですか?」
「あぁ。
いつでも良いんだ。
なんとなく今日にすっかなぁくらいのやつだから」
不思議そうな顔をしながらも、分かりましたと受け止めてくれる。
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