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第1435話
蜜柑を食べ終えた小さなしっかりと手を握り、優登の通う学校までお散歩をする。
最初は図書館までのつもりだったのだが、もっと!歩くの!と元気の塊が手を引っ張った。
この距離ならおんぶで帰ってもいけるだろう。
小学校に差し掛かった所で一所懸命動いていた足が止まった。
「あ、ぽっぽっ」
「本当だ。
可愛いな」
鳥を見付け指差す方を見れば、桜の蕾がふっくらとしはじめてきていた。
遮る物がなく日当たりが良いお陰だろう。
だが、早く咲きすぎても入学式が寂しい。
その下で地面をつつく鳥を指差しうにゃうにゃと話す弟に相槌を打つ。
春だな
マスクばっかしてるとにおいとかわかんねぇけど、春のにおいすんのかな
苺大福食いたい……
ぽけっと考えていると、握った手をグイグイと引かれる。
「はーう」
「どうした」
「ちゃーちゃ、くあはい」
「あぁ。
お茶な」
リュックの中から小さなそれを取り出した所で名前を呼ばれた。
まだ聞き慣れない不安定な声。
「兄ちゃんっ!」
「あ!ゆーとっ!」
遠くから手を振る弟とその友人に三条達も大きく手を振り返した。
2人は指定の鞄をカチャカチャと揺らしながら走って傍までやってくる。
「かじゅ!」
「おーす。
綾登久し振り」
「んへへ」
手を握りグーにして差し出すと綾登も真似をする。
「グータッチ!」
「ち!」
あまり他人との交流のない幼い弟だが、こうして兄達の友人から交流の仕方を教わっている。
もう少し世界が穏やかになれば良いのだが。
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