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第1436話

お茶を飲み終わるのを待ってくれる弟達は、楽しそうに学校の話をしてくれる。 直接学校に通えていない三条にとって、外の事を知るのはこうして誰かを通してだ。 うんうんと聞きながら楽しい事を擬似体験。 しゃがみ込んでる三条の隣で、ぷはっと可愛らしい声がした。 それが合図のように兄とその友人は小さな頭を見詰める。 「ごちたまでした。 いっしょ、かえろ」 「やったー。 綾登と遥兄と一緒ー」 「俺、遥登の隣ぃ」 「あ!あーとの!」 わちゃわちゃと騒ぐ弟に両隣を挟まれたかと思えば、後ろからグイグイと背中を押される。 「俺は背中ー。 早く帰ろ」 押されながら水筒をリュックにしまう三条はにこにことしていた。 春のにおいは分からない。 苺大福もまだ今年は食べていない。 それでも、今日が楽しいと笑っている弟達に挟まれ楽しく1日が過ぎていく。 悲観するのは簡単だ。 目の前に広がる世界を見れば良いだけだから。 だけど、どうせなら少しだけ視線を逸らして楽しい事を見た方が良いと思う。 だって、悲しい事は好きではないから。 「あ、にゃこちゃ」 「にゃこちゃん?」 「猫だよ。 あ、あそこ」 「ほんとだ。 可愛い。 綾登、視力良いな」 「にゃー」 ほらな。 楽しい事は、こんな近くにある。

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