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第1437話

三条は春になるとソワソワしだす。 穏やかににこにこしている恋人はニュース番組がさくら前線の便りを出すと、キラキラした目でその画面を見詰める。 先週借りた本を返しに来てくれたので、かわりになにか借りていけと誘い部屋へと連れ込んだ。 本棚を目の前にワクワクした顔を見せていたが、ニュース番組が春の便りを読めばテレビへと視線を通したまま。 花見の弁当のせいだけではない。 花より団子……な所もあるかもだが、四季折々の美しさをよく知っている子だからこそ季節を楽しめる。 なんとも思わなかったこの季節を早くこいと願うのはまさにこの子のお陰だ。 漸く本棚へと向き直った頭をポンッと撫でた。 「?」 「愛してるって思っただけだ」 「え、あ…俺も、愛してます」 恥ずかしそうにはにかむ姿は、春なんて季節には見られないからな。 「正宗さんが、1番好きです」 これだぞ。 肉体があって、本当に良かった。 季節という移ろい行くものでなくて良かった。 「食っちまうぞ」 「なっ、んで…」 「さぁな」

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