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第1438話

長岡は春が来るとそわそわしだす。 現に、デートをしている今も桜の木へと視線を送っている。 以前はそんな感じはしなかったので、花見がたのしみなのかなって思う。 そして、自分とお花見するのが楽しみだからだと更に良いな。 月明かりの下のデートも何回目だろう。 何度繰り返しても大好きだ。 三条は気付かれないように同じ方向を見る。 確かに待ち遠しい。 けど、こっちも見て欲しい。 流石に桜にまで嫉妬はしないが、少しだけ自分にも興味をもって欲しい。 繋いだ小指を少し揺らした。 「待ち遠しいですね」 「あぁ。 今年も花見しような」 「はいっ」 並んで歩くだけの花見でも、隣に恋人がいればそれだけで楽しい。 夜桜なんてロマンチックなものは、艶やかさまで増す。 世界が美しいもので溢れるんだ。 暗がりだってなんだって、構わない。 大好きな人と歩ければ。

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