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第1445話
洗濯機から取り出した服の山を抱えて母親は心配そうな顔でリビングへとやって来た。
「どうしたの?」
「あー…、もう大丈夫だよ」
本人には失礼だが、真っ赤にした鼻が可愛い。
次男からティッシュを取ってもらい、顔に押し当てるとそれはすぐに濡れた。
鼻をグリグリして顔の水分を拭う。
「たーん…する」
「ちーんな」
隣の次男の顔からなんとなく察した母は、それ以上深く追及せずにいる。
こればかりはなんと声をかけたら良いのか分からない。
当人でなければ分からない複雑な気持ちだ。
「綾登のお鼻真っ赤。
可愛いね」
「かあい、ね」
「うん。
可愛い。
でも、笑うともっと可愛い」
母は水に触れていたからか、そっと指の背で前髪を撫でた。
その指が謝っているようで、三条は苦しくなった。
なんでだろうな。
誰も、なにも、悪い事はしていないのに。
「遊ぼっか。
あ、公園行くか?」
「いきたい」
「じゃあ、お昼まで遊びに行こっか」
お昼に帰ってくるとして、自宅から公園、公園から自宅までの時間を除けば1時間ほどだ。
それくらいなら気分転換にも丁度良い。
「遥登、お母さんが行くから良いよ」
「良いって。
優登も行くか?」
「行く」
「て、事だから。
昼はホットプレートで焼きそばが良いな」
「なぁ!」
「あ、うん」
喋りながらも末っ子に防寒具を着せ、出掛ける準備を整えていく。
いつ、どうなるかは分からないが、就職をしたら兄弟でこんな風に過ごす時間は少なくなるだろう。
その前に、沢山遊ばなければ勿体ない。
こんな可愛い盛りと、遊び盛りがいるんだ。
午後からは次男とゲームをする。
なら、午前中は三男との時間だ。
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。
掃除機かけちゃお」
「そうしなよ。
じゃ、12時には帰ってくるから」
「いっちきます!」
漸くいつもの元気を取り戻した三男と次男と公園だ。
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