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第1446話
公園には誰もおらず、兄弟3人だけ。
綾登はお気に入りのすべり台へと駆けていく。
「しよ」
「ん。
しような」
その後ろを大股で追い掛ける三条。
優登は近くのブランコへと腰を下ろした。
「ぬえてる」
「じゃあ、滑れないな」
「あっち」
「どこ?」
「あれ」
バネで動くロバと馬のハーフみたいな生き物に跨がりたいと腕を広げる。
兄が脇に手を入れ抱き上げて乗せると、一緒に跨がった。
楽しそうな声が響く公園。
その様子をただ眺めた。
そうしてふと自宅から持ってきたタブレットで、兄弟の写真を撮っていく。
守りたいと思う。
2人の為なら我慢出来る
自分が我慢をしてそれが守られるなら良い。
だけど、そうではない。
そんな無情な現実が大嫌いだ。
一緒に揺られる兄弟の笑った顔が大好きなのに。
足元を見詰め気持ちを落ち着ける。
不安にさせたい訳じゃない。
家は、無防備に安心出来る場所だ。
誰にとっても。
その時、視界に長靴が映った。
「ゆーと」
「どうした」
「どっか、たいたい?」
「どこも痛くねぇよ」
「さっきは、ごめんね。
ないちゃった」
「俺こそ、ごめんな。
楽しい事、なくなって寂しかったんだ。
綾登はなんも悪くねぇよ。
謝らなくて大丈夫なんだよ」
くしゃくしゃと冷たい髪を撫でる。
綾登は、もっと楽しい事の少ない学生時代を生きるんだ。
自分ばかりは恥ずかしい。
「はうとがね、こえ、げんきになるって。
あのね…あの………なんだっけ」
「キャラメル?」
「そ!
きあめる!」
手渡された小さなお菓子に気持ちが軽くなった。
なんでだろうな。
「あーとは、ぼーろ」
「手ぇ、洗ってからな」
「はうと、おてて」
「はいはい」
また1枚写真を撮るとその後に続いた。
「俺も手ぇ洗う。
てか、水冷たいから消毒じゃ駄目なの?」
「そうする?
じゃあ、そうしよっか」
「ごしごし?」
「そう。
ごしごし」
「やった!」
「なに喜んでんだ?」
「俺にも分からない…」
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