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第1447話

自宅に帰ってくると、ソースの焼ける良いにおいが廊下にまで漏れていた。 いそいそと靴を脱ぎ、リビングへと続く扉を開ける。 すると、その脇から小さな頭がすり抜けた。 「たあいま!」 綾登は、手を洗うより先にしゃがんでくれる母に抱き付きに行くと嬉しそうに喋っている。 兄達も後に続き入室する。 香ばしいにおいとあたたかい室内。 外の空気も良いが、あたたかい室内は最高だ。 食卓の上にはホットプレートいっぱいの焼きそばが湯気をたてている。 もう空気がソース味で美味しい。 鰹節や紅生姜、マヨネーズが机に並んでおり、良いタイミングで帰ってきたことが伺える。 マフラーを外しソファにかけると、となりにもう1つ並んだ。 優登の物だ。 「おかえり。 公園楽しかった?」 「ん!」 しっかりと頷く頭を撫でる母親は、おかえりと三条達にも声をかける。 穏やかな声はずっと兄弟を守ってくれる安心するもの。 三条が長岡に対して感じる絶対的な安心感を、弟達は両親から信じる。 「…ただいま」 「ただいま。 手、洗うね」 「ちゅべりだい、ぬえてた」 「昨日、雨降ったもんね。 また今度行こうね」 「みっちゃと? やったあ」 肩をぶつけてきた次男に視線をやると、悪戯っぽい顔をしていた。 こちらも、もう大丈夫そうだ。 だけど、してやれる事はしてやりたい。 そう思って当然だ。 だって可愛い弟なんだから。 肩をぶつけ返すとその顔は更に母親に似ていた。 ハンドソープを泡立て嗽をして、小さな弟を持ち上げそれを見守る。 そうしてやっと昼飯にありつける。

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