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第1448話
「あーと、こえ、すき」
「沢山食べてね」
「あーい」
大きな口で頬張る弟の向かいで兄達も同じ物を啜る。
マヨネーズをかけた次男に、綾登は口を開けてみせた。
「ちょーらい」
「良いよ」
口に入れてやる弟の姿を見ながら染々と思う。
優登と一緒に公園で遊んだのはずっと昔だ。
今は綾登と3人でボールを蹴って回している。
その分だけ大人になった。
だけど、三条にとっては今も変わらず可愛い弟だ。
あの頃と変わりはしない。
けれど、実際の弟は14歳で中学生。
すっかり大人になっている。
「んー!」
「美味いだろ。
でもなぁ、目玉焼きのっけたのはもっと美味い」
「おめめ」
「そ。
みっちゃんに強請っとけ」
「みっちゃ、おめめ」
「うん。
次は目玉焼きも用意しとくね」
「うれち」
綾登は両頬を小さなクリームパンみたいな手で抑えて喜んだ。
にこにことその様子を見ていた三条と目が合った次男は、首を傾げた。
なぜ笑っているのか分からないのだろう。
それで良い。
成長を見てニヤニヤされるのが嫌な事は三条だって分かっている。
だけど、弟の姿をみているとニヤニヤしてしまう。
こればかりは、長岡が染々と自分の成長を褒める事を指摘出来ない。
これが、愛だ。
家族愛。
「目玉焼きのっけたの、美味いよな」
「だろ。
ちょっと特別感出るよな」
「たまごのっけただけなのに、なんでだろうな」
ずるずると啜る昼飯を腹一杯食べた。
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