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第1449話
「優登。
ゲームの前に、おやつ買いに行かね?」
「え、良いけど…」
じゃ、腕時計付けてくる、と言えば、納得した顔をみせてくれた。
腕時計を付けたいのも本当だが、少し2人で話がしたい。
といっても、一方的に話したい事があるだけなのだが。
手首に腕時計をし、マフラーをしっかり巻き付け階段を降りていくと、コートを羽織った弟が既に廊下にいた。
待たせてしまったかもと足を早く動かす。
「待たせちゃったな」
「んーん。
今出てきたとこ」
「母さん、コンビニ行ってくる」
「気を付けてね。
あ、牛乳買ってきてくれる?」
「なんでも良い?」
「うん。
あと、明日の朝ご飯パンだから、ジャムがよかったらそれも。
あとでレシート貸してね」
「分かった。
じゃあ、いってきます」
綾登のお昼寝に合わせて、そっと抜け出る。
先程と変わらずそらは薄雲がかかり肌寒い。
マフラーをマスクと同じ位置まで上げて冷たくなっていく鼻を守った。
隣を歩く弟も同じ事をしていた。
「なぁ、お願いがあるんだけど良いかな」
「お願い…?
俺に?」
「そう。
優登にしか頼めねぇの」
うん、と頷く弟。
三条は、なんて事のないように続ける。
「俺が先生になれたら、修学旅行の引率練習させてくれるかなって。
勿論、一樹も一緒に」
「…っ!!」
「駄目?」
「駄目じゃないっ!
ほんとに、一樹も一緒に良いの」
「一人だけ引率ってのもなぁ」
優登の目がキラキラと輝く。
それは揶揄ではなく本当に。
プラネタリウムの星なんかじゃ足りないくらいの輝きだ。
綺麗だと思うよりまず、その顔が見られて嬉しいと思った。
そして、連れて笑う。
「しおりも作って時間厳守にしようか。
それと、優登と一樹は同室な。
俺は一人部屋」
「うんっ」
せめて楽しい事を作ってやりたい。
それ位してやれないで、他に何をするって言うんだ。
目の前の“1人”を守れないで、大勢が守れるか。
世界を守っているのは、大人だけではない。
優登も綾登だって守っている。
そんな子達になにかしてやりたいと思うのは当然だ。
「楽しみっ!」
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