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第1452話

3月も終わりが近付き、もうすぐ桜が咲きそうだ。 細い枝にしがみつくように揺れる花は、儚い印象とは異なり力強い。 「遥登」 「正宗さん…っ」 よ、と手を上げる恋人に駆け寄ると、腕に触れ抱き止めてくれた。 今までのようなハグではないが、それでも確かな接触が嬉しい。 「待たせちまったな」 「んーん。 今来たところです」 「本当かよ。 そうだ、手紙、ありがとな。 すっげぇ嬉しかった」 「俺も、嬉しかったですから」 「だからくれたって書いてあったな。 あんなメッセージカードで、こんな良い手紙が貰えんだから得役だな」 「俺には、それだけ意味のあるものなんですよ。 すごいんです。 ここのお守りより効果あります。 本当はスマホケースに挟みたいんですから」 自慢したい。 俺の恋人は、こんなに優しくて愛情の深い人なんだと。 顔だけではなく、心まで綺麗なんだ。 自分には勿体ないほどの恋人。 絶対にあげないけどね。 「流石に言い過ぎだろ」 「俺がそう言ったらそうなんですよ」 悪戯っぽく笑うと頭をポンポンと撫でられた。 こうして、触れ合える相手からの贈り物の方がずっと、ずっと意味のある物だ。 少なくとも、俺にとっては。 「今日のデートは車でも良いか?」 「え、はい」 外でデートも勿論嬉しいが、車内は2人っきりの密室だ。 そちらも好きに決まっている。 しかも、車内は長岡のにおいでいっぱいなんだ。 最高の空間。 「んじゃ、駐車場までデートしようぜ」

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