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第2話仲間と使命

真っ白な光が一瞬にして俺を包み込む。あまりの眩しさに思わず目を覆ってしまう。直後に感じるふわりとした感覚。気づくと俺の体は空中に放り出されていた。 「ちょ、え?なんでぇえええええええええええええ!!」ヤバイこれはヤバイ、死ぬかもしれない。だんだんと近づいてくる地面。うん、死んだわ。そう覚悟した目をつむり、迫る衝撃に身を固くする。しかし、予想していた衝撃は訪れなかった。ポヨヨンという表現がしっくりと来るだろうか。地面はとても柔らかかった。この場合は死なずによかったと喜ぶべきなのだろうか。たとえ地面が跳ねるといった異様なものでも。 それはさておき、どこだ?ここ。見渡す限りに緑だ。ゆっくりと体を起こし、自分が落ちてきた天井を見上げる。滞空時間は数秒だったと思うけど、メチャクチャ高い。こっわ!天井を見て呆けていると、「お前も落ちてきたのか?」不意に背後から声がした。「ふぇっ!?」突然の声にビックリして間抜けな声をあげる。「ふぇっ!?だってさ!おっかしーの!!」声の主は後ろで笑い転げている。腹が立ったのでキッ!と後ろを睨み付ける。後ろにいたのは少年だった。歳は12~14くらいだろうか?勝ち気な目とふさふさの髪は赤く獣の耳がついている。こちらを見てにひっ!といい笑顔を向けてくる。かっ、可愛い!まだ、幼さを残したあどけない笑顔にみとれていると、少年は俺の頬を両手ではさみ、いい笑顔のまま告げた 「お前可愛いな!どうだ?お兄ちゃんとイイコトしない???」 「うん」 あ、やべ思わず即答してもうた!その言葉を待ってましたとばかりに微笑んで顔を近づけてくる。これって、これって~ キッ、キッ、キッ、キス~!?彼我の距離まで数センチその距離にドギマギしてしまい、思わず目をつむる。熱い吐息が顔にかかる。あと少し、あと少しで人生初のキス。い、イタダキマー……スパァン!望んだ感触は得られず、乾いた音が鳴り響いた。目を開けると青色の髪をした少年が赤髪の少年の頭を平手で叩いていた。人生初のキス(それもイケメンとのもの)を邪魔されたにも関わらず、どこか安心している自分がいる。青髪の少年は目も青くじっと見つめていると吸い込まれそうだ。眼鏡をかけていて、どこかクールさを漂わせている。 「なにすんだよ!もう少しでいいとこだったのに!」赤髪の少年もにたようなことを思ったのだろう、青髪の少年に噛みついている。 「いいところもなにも、堂々と年下を襲うんじゃない!」青髪の少年は赤髪の少年の文句をバッサリと切り捨てる。「君もだ!いくらそういうことに興味のある年頃だとはいえ、初対面の人、しかも男とキスを交わそうとするんじゃない!」そして俺も怒られました。「す、少しは自分の容姿を自覚したまえ!」と、青髪の少年は若干とまどいを見せてそういった。え?、自覚?「えっと、俺そんなに目を引くような容姿?」と問うと、「あぁ、スッゲェ可愛いぜ!翡翠みてーな瞳の色とか!」赤髪の少年が答えてくれた。翡翠のような瞳?はて?「俺そんな容姿じゃないよ?」というと、青髪の少年が親指でクイックイッとそばの泉を指す。 恐らく確認してみろとのことだろう。 いぶかしげに思いつつも泉を覗いてみる。そこには愛くるしい少年が映っていた。これが……俺? さらさらとした髪と大きな目は言われた通りの鮮やかな緑色、見た目は10歳くらいだろうか。 どっかで見たことあるな~と思ったらこれ、俺が作ったキャラだ。……まさか、転生?いや、俺死んでないはず……だよね?うーん、ここんところ食事もしないでゲームゲームだったからな……。 まぁいっか、せっかく可愛い子になったんだしこれはこれでいいや。それはさておき、この二人は俺が選んだ仲間とおんなじ容姿だし、ここはクリストの世界で間違いないだろう。 「な、凶悪だろう?その容姿」青髪の少年に言われてこくんとうなずく。確かにこの容姿は可愛すぎる。確か、青髪の少年が清水知聖、赤髪の少年が犬神力人だったはずだが、一応確認しておくべきだろう。多分この二人とパーティーを組むことになると思うから。「そういえばふたりとも、名前は何て言うの?俺は風谷勇助、よろしくね」そう言って微笑む。「俺は犬神力人だ。よろしくな」と、赤髪の少年が告げる。 それにならって青髪の少年も「僕は清水知聖だ。ヨロシク頼む」と短くのべた。そういう知聖の頬はなぜか少し赤が差していた。 それから俺たちはお互いのことを知るために少しの間話をした。どうやら知聖は良家の出で、力人は元スラム出身とのことだった。力人に「それって、嫌な過去とかじゃないの?」と聞いてみたところ、「別に気にしてねーからお前も気にすんな」と返ってきた。少し気になるところはあるが、本人がそういうなら気にしないでおこう。それにしてもこうしてまじまじと見ると二人が整った顔立ちということがわかる。力人はまだ少し幼く見えるが、将来は有望だろう。知聖は言うに及ばず、知的な眼鏡が最高に似合いたまに眼鏡を押し上げる姿がたまらない。そうやって二人を見つめていると、力人と目があい「どうした?襲ってほしいのか?」と聞かれた。返事に困っていると、「だから、そういうことを言うなっていってるだろ!ほら、勇助が困っているだろう。」それを聞いた知聖がまた、注意する。そしてまた言い合いが始まった。違うよと言って、会話に加わる。「二人ともカッコイイなって思って」それを聞いた二人は軽く頬を染めた。知聖は「っ……君こそ……可愛いというか……いや、ここは普通にありがとう……でいいのか?」と狼狽えている。一方で力人は嬉しそうに微笑みながら無言で手を引っ張ってくる。付いていったらナニをされるんだろう。考えると少しドキドキする。しかし、知聖の手前下手なことはできないので、やんわりと手をのける。力人は少し不服そうにしたものの、すんなりと手を引いてくれた。 「……そうか、カッコイイ……か……。」 隣で知聖はまだ、トリップしていた。 それからもしばらく話をしていると、「あー、そろそろ集まってもらえんか?」という声が聞こえてきた。部屋を見渡すと見知らぬおじさんがいた。アゴヒゲが異様に長くてぱっと見仙人だ。 俺たちがそばに集まったのを確認して仙人のおっちゃんは話始めた。 「うむ、では自己紹介から入ろうかの。わしは仙人じゃ」 うん、見たらわかる。 「あのー、それって自己紹介になってます?」知聖が尋ねる。「仙人ですも立派な自己紹介じゃ」と仙人。 「そうじゃなくて、名前とかそういうなんか、あるでしょう?普通は。」 「まあまあ、今それはおいとくとして……」 なおも食い下がろうとする知聖を仙人はなだめながら話を続ける。 「実はじゃな、お主たちには旅に出てもらいたい。」 「「旅?」」急なお願いに三人揃っておうむ返しに聞いてしまう。 「そうじゃ、実はこの世界はな、凶悪な電子AIによって見えぬところからじわじわと侵略されていっておる。」だから、その電子AIを倒してほしい。それが仙人の頼みだった。

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