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第4話はじまりの第一歩

「唐突に使命を貸すことになってすまんかったの。せめてもの詫びじゃ、この先なにかと困難が待ち受けておるじゃろう。お主達に装備を贈らせてほしい。」仙人がパチンと指を鳴らす。すると、俺たちの体が淡い光に包まれる。 それまで着ていた服は消え去り、新しい服装に変わる。長袖のシャツはリネン製のもので、その上に半袖の皮の上着。ズボンとアームガード、そして、膝したまである長靴同じく革製。耐久と身軽さに問題はなく、動く邪魔にもならない。そしてフードつきのマントはそれぞれの髪の色とおんなじだ。 「それから、身を守るための武器じゃ。」再び仙人がパチンと指を鳴らす。 俺たちの頭上に綺麗な石が現れた。ひとつは赤、もうひとつは青、そして緑だ。3つの石はゆっくりと互いの軌道を絡ませながら俺たちの手の中に収まった。 「それは召喚石と呼ばれる種類の宝石じゃ。砕きなさい。お主達の身の丈にあった武器が出てくるであろう。」とせんにんは告げた。 そこで俺たちは近くの岩に石を置き、力人、知聖、俺の順で手頃な石をぶつけて召喚石を砕いた。ちょっと雑な扱いではあるけど仕方ない。相手は宝石だからね、こうでもしないと砕けない。 赤、青、緑の順にまばゆい光に包まらる。まず、力人の武器が現れた。力人の武器は青竜刀と呼ばれる中国の武器が現れた。続いて知聖の武器が現れる。知聖の武器はは弦の張っていない真っ黒な弓だった。これ、どうやって使うんだろう?それよりも、俺の番だ。他より少し長い待ち時間のあとに、形状が現れる。現れたソイツは1m弱の長さで、握りの所に鷲をあしらった金でできた彫刻がある。獲物に滑空する時の様子を巧く表現している。 「あの、これ、どうやって使えばいいんですか?」と知聖が訪ねる。あ、やっぱりそこが気になっちゃうよね。 「ふむ、これはまた、面白いものが出たのぅ。これは具現の弓矢じゃな。それをもって魔力を流し込んでみなさい。」 「???」疑問符を浮かべながらも知聖は言われた通りにする。すると、二つの弦輪に当たる部分から青白い光が延び、真ん中で玉の形を作った。 「つぎはぎそこの丸のところに手をかけて、引いてみなさい。」 知聖が弓を構え弦を引く。そこに突如、水でできた矢が現れた。知聖が手を離すと、水矢は木でできた壁にまっすぐ飛んでいき、当たったところに大きな穴を穿った。 「具現の弓矢とは、持ち主の魔力によって、矢の性能が変わり、流し込む魔力の量に応じて、威力や起動までもが操れるという一品じゃ。」 呆然としている俺たちに、料理番組のナレーションか!と突っ込みたくなるような説明を仙人がしてくれた。 「これも、なんかあるのか!?」と期待顔で知聖が訪ねる。 「うむ、それも同じく魔力を流し込むことによって性能が変わる、具現の刃じゃのう。」 「へぇー、じゃあ、お手並み拝見っ!」 そう言って力人が大きく刀を振るう。ごおっ!という風切り音を立てて炎の斬撃が知聖と同じ場所めがけて飛んでいき、壁をえぐった。 「へぇ、すごいね。じゃあこれはさしずめ『具現の杖』といったところですか?」と、期待して聞いてみる。 「うむ、これはわかりません!」俺たちは一斉にずっこけた。 「ちょ、わからないってどういうことですか!あんた仙人でしょう!」 「ええい!仙人とて万能じゃないわい!」なにかわからない、と聞いてすっかりうなだれる。 「あーあ、せっかく知聖や力人みたいに魔法が使えると思ったのにな」そう言って知聖と力人が残した傷跡に手を触れる。 「お、おい、それ!」知聖が何やらうろたえている。 「どうしたの?知聖?」と聞くと、俺の手の方を指差している。見てみると、そこにあった傷がキレイに無くなっていた。 「あれ?傷はどこ行ったの?」と尋ねると、 「どこ行ったの?もなにも、たった今お前が直しちまったんじゃねぇか。」力人までもびっくりしているようだ。 「いやはや、驚いたのぅ。これはヒーリングか。」ヒーリング?ヒーリングって回復のことだよね?これって僕の魔力?聞いてみると、どうやら違うらしい。この世界では、魔力は道具を経由しないと具現化されないみたいだ。本来、決まった魔力を1人ひとつもしくは魔力量に応じていくつか持っているらしく、その魔力が炎なら炎、水なら水とそれを経由させる組織図を魔具に組み込まないといけないらしい。知聖達の持つ『具現の魔具』と呼ばれる道具は反発しあう魔力同士を巧みに組み合わせて、打ち消されることがないようにされているらしい。しかし、現在ではこの術式が解明されず、『具現の魔具』はいにしえの秘宝と呼ばれているらしい。 「てことは、この杖も具現の魔具なんですか?」 「いや、具現の魔具は世界に7つしかないんだよ。すでに世界には5つ存在しているんだ。そして、僕たちのこの二つときた。つまり、それは具現の魔具ではない。」 知聖が冷静に述べる。そっか、残念。 「でもよ、この威力はやばくないか?もしかしたら、八個目かもしれねぇぜ?」と力人。 「そうか、確かに教科書にはそう記述されているが、歴史の明るみに出ることのなかった八個目が存在していても不思議ではないだろう。」知聖も納得だ、とうなずく。 「なんにせよ、この杖はお主にあった武器という訳じゃ。いつか、役に立つときが来るであろう。後は、荷物じゃのう。」そう言って三度、指を鳴らす。 「中にはロープや火打ち石携帯食料などひとまず旅の役に立ちそうなものを入れておいたぞい。……ワシにできることはこれくらいじゃ。では、頼むぞ。」最後に真剣な眼差しで俺たちを見つめる。これにはきちんと答えるしかないだろう。 「もちろん!シズクを倒してこの世界を救ってみせます!」と決意を述べた。 「この世界は僕たちが守ります。」 「この世界にゃ気に食わねぇこともいっぱいあるけど、だからってAIの好きにさせてたまるか!」 続いて知聖、力人と続く。その返事に仙人は大きく頷いた。 「すぐそこの出口を抜けた先にダソスという国がある。そこからはお主達のちからでやっていかなければならん。では、達者でな。」 俺達は仙人が指し示してくれた出口へ歩いて行く。仙人は最後まで俺達を見送ってくれた。

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