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初めての夜(6)

「アンバー、早く……何とかしろ……」  アンバーは、なんとかベッドまでアンジュを連れて行き座らせた。だけど今は、アンジュから離れて部屋の隅で蹲っている。 「アンジュ、お願いだこっちを見ないで」  モーテルの部屋のカーテンは薄く、外の光は容赦なく射し込んできている。  アンバーの身体は、明らかに変化していた。  黒い毛が身体を覆い、獣の耳も、フワフワの尻尾も生えていた。もう隠しきれることも出来ないのに、アンバーは自分の姿をアンジュに見せることを躊躇っていた。 「お前、何言ってんの。ここまで来て、女の子じゃないんだから観念しろ」  アンジュはもう恥ずかしがっている場合じゃないくらいに、身体の火照りを持て余している。  自分で服を脱ぎ捨てて、一糸まとわぬ姿で、部屋の隅で震えている黒い狼に歩み寄っていく。 「アンバー、好きだよ。愛してる」  大きな身体を背中から抱きしめて、アンジュはアンバーの獣の耳元に囁いた。 「早く、俺の初めてを奪えよ」  顔を覗き込み、犬歯が見え隠れする唇にキスを仕掛けた。 「……アンジュ……」  逞しい腕がアンジュの背中に回り、ぎゅっと抱きしめた。 「僕のこと怖くない?」 「別に」  イアンと違う、黒い獣毛。凛々しくて美しい。  白い狼が神なら、黒い狼はまるでソルジャーだ。 「カッコイイよ」  そう言ってアンジュが微笑むと、アンバーは堪らずに、食らいつくように唇を重ねた。  舌を絡め逢い、二人の唾液がお互いの咥内を熱くする。  初めての発情期。アンジュは、キスをするだけで、後孔の奥から、じわじわと熱い粘液が溢れてくるのを生まれて初めて感じた。  お互いに惹かれ合い、最初から、いつかこうなると心のどこかで思っていた。  どこをどう触れたらいいのか、不思議なくらいに分かる。  アンジュの肌は、触れる度に紅く色づき、甘い花の香を部屋中に解き放した。  とろとろに濡れた後孔に雄の切っ先をあてがい、後ろから思い切り突き挿れると、背中が綺麗に弓なりに撓り、匂いはもっと濃いくなっていった。  本能のまま求め合い、何度も何度も昇りつめた。  アンバーは何度目かの絶頂の時、我慢できずに目の前にある白いうなじを犬歯で緩く突いた。 「いいよ、アンバー噛んで、早く。全部お前の物にしろ」  美しい年上のΩに命令口調で言われると、逆らえない。  鋭い犬歯は、更に伸び、牙と言う方が相応しい。  その牙で、アンバーは思い切り白いうなじに噛みついて、一生消えない傷跡を残した。

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