7 / 74
7.
結果的に、セーフワードは本郷の下の名前に決まった。いろいろ難しい言葉を考えても、とっさの時に出て来なきゃ意味がないし、かと言って普通に口に出してしまいそうなものでもダメだ。
俺は友達を下の名前で呼んだりしないし、俺にとって本郷は本郷で、「大悟《ダイゴ》」じゃない。
俺があいつを下の名前で呼んだら、強制的に機能停止。
ホントにそんな「魔法の呪文」みたいに使えるのか半信半疑だったけど、Domだと言う本郷自身が言うのだからそうなのだろう、と思った。
思えば、本郷の口からダイナミクスについて聞いたのも、この時が始めてだった。
***
「ちょぉ、おい、本気かよ!?」
我ながら情けない声が出た。
本郷が、ベッドの縁に座る俺に向き合うように、床に下りたからだ。
「マジで、するよ?でもやばいと思ったら、さっきのセーフワード、使っていいから。」
フェラだけなら、前を開けるだけでもできるはずなのに、俺は下半身に靴下しか履いていなかった。
「いいから下全部脱げって」
そう言われ、上半身は制服のシャツとセーター、下は丸出しという間抜けな格好だ。
本郷は俺の膝を両手で割ると、前に垂れるシャツの裾をそっと持ち上げた。
かき合いのときは、そんなに間近でそこを見られたわけじゃない。
俺はそれを凝視する本郷の視線が痛くて、顔をそむけた。
「ちょっと勃ってきてんだけど。なに、おまえ見られると興奮すんの?」
面白がるような口調で本郷がしゃべると、その息がふっふっ、とちんこにかかる。
どんな近くでしゃべってんだよ、と思って見たら、それを待っていたように幹をベロリと舐められた。
「わあぁっ!」
そんなとこに舌が触れるなんて初めてのことで、その濡れた生温かさに身体が震えた。
「もっと色気のある声だせよな。」
先っちょに唇をつけて、本郷が笑う。
「バカか!そういうのは女子に言えぇ!」
「残念でしたー。女子にちんこはありません。」
本郷は俺と目を合わせたまま、口を開けて俺のをその中に咥え込んだ。
「ふぁ…… っ!」
熱く柔らかな舌が、俺のを舐め回す。瞬殺で完勃ちになったのが自分でわかる。吸い上げるように圧をかけながら根元から舐め上げられ、そのまま一気に持っていかれそうになって、俺は焦った。
ヤバイヤバイこれどうしよホントだめこれもう出そう…… 恥ずか死ぬっ!!
腰がガクガクして座っていられなくなった俺は、ドサッと後ろに倒れこんだ。
そしたら、ちんこにかかっていた圧と熱がなくなった。本郷が口を離したからだ。
おかげで、男にフェラされて秒殺という羞恥からは、なんとか逃れられた。
「…… 武士の情けじゃ。」
そう言って見下ろしてくる本郷の唇が、唾液で光っていた。勝ち誇ったように笑うイケメンに、すでにイきそうになっていたことがバレていて悔しかったけど、寸止めにしてくれたことには素直に感謝した。
「…… かたじけない…… 」
上がった息の合間にそう言うと、本郷が、ふは、と吹き出した。
ともだちにシェアしよう!