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なんでだか、わからない。
もしかしたら、イケメンにはそういう、言うこと聞かせるオーラ?カリスマ性、みたいなのがあるのかもしれない。
シャツの裾が前に垂れてて、萎えた俺のをうまく隠してくれてる。
俺がゆっくり腰を落とすと、少し開いた本郷の腿の間に、濡れた尻が乗った。
これなら、汚さないか……?
顔を上げると、あいつは右目を閉じたまま嬉しそうに笑って、俺の腰に手を回した。
「おまえの指で、ゆっくりまぶた開けて、そーっと舐めろよ。」
「…… したことねぇから、わかんねぇよ…… 」
「大丈夫だって。舌硬くしないように、柔らかいままで、飴みたいに優しく、ゆっくりな?」
そう言うと、本郷はキスを待つみたいに、両目を閉じて顎を少し上げた。俺はごくり、と唾を飲み込んで、ちょっと口を開けた。両手の親指で、本郷の右のまぶたを上下に開く。指の腹に、柔らかいまぶたの皮膚が、ピクピクと抵抗するのを感じた。
そっと口を近づけて、舌先を出し、キュロリとした本郷の眼球を、そっと舐めた。
少し苦くて、その後ちょっとしょっぱくて、それがあいつの眼球の味なのか、それを守る涙なのか、…… 俺のアレなのか、わからなかった。
下から上にゆっくりと舐めて舌を離すと、いきなり本郷の腕がぎゅっと背中を締めてきた。
「ぐぇ…… っ!」
俺の喉から、カエルが潰れたみたいな声が出た。
またなんか笑われる、と思ったのに、本郷は俺の身体に顔を押し付けたまま、何も言わなかった。
ただ男の俺でも苦しいほどに、強い力で背中を締め付けた。
なんだよ、どおしたんだよ…… ?
俺は戸惑って、海老反りにされた身体をされるがままに、本郷の膝の上で待った。
本郷の顔は、見えない。
背の高いあいつの頭を見下ろすのが珍しくて、ミステリーサークルみたいなつむじを見ていた俺は、じわじわと下腹に違和感を覚えた。
まさかとは思ったけど、それはだんだん熱く硬く、ごまかしようのないほどに、膨らんでいって。
増えた体積に圧迫された俺の下腹を、じんわりと温めた。
「ばっ、おま、何考えてんだよ!?今ので…… なんっで、勃ってんだよぉーーっ!?」
俺が慌てて膝から飛び退 ると、残念なイケメンは珍しく、両手で顔を覆って俺の空けたスペースに長身を折った。
「悪 ぃ…… 」
両手の間から、低いくぐもった声がした。
その1ヶ月後に酔った勢いで、その熱を体内に受け入れてしまうとは思ってもいない、晩秋の夕方のことだった。
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