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22.
腹を大きく上下させて、海老沢は目を閉じた。オレが萎えたのをそっと引き抜くと、片眉だけがピクリと動く。手足を投げ出した無防備な仰向けで、少しずつ呼吸が落ちついていくのが見てわかった。
「シャワー、浴びる?」
「あとで…… 」
小さく答えた海老沢は、そのまま寝息を立て始めた。
安定の寝落ちだな……
カーテンの下から漏れていた西日は、とっくに消えた。外はすっかり暗いのだろう。
2時間も喘がされて、体育会系でもない海老沢にはつらかったはずだ。
オレは水筒に用意してたお湯でタオルを濡らして、海老沢の身体を拭いてやった。どこを拭いても、人形みたいに反応がない。
熟睡してんな……
ヘトヘトになるまで攻めて悪かったと思いながらも、気を許されてることに嬉しくなる。
でも最近、やっぱりなんか変なんだ。
こないだのウィダニー、ほんとはヤだったのかな、とか。
一応オレなりに反省はしたはずなのに。
それなのに今日も結局、むしろこないだより、海老沢を苦しませるプレイになってしまった。
だってオレはDomだから。
好きな子は、いじめたい。
耐える顔が見たい。
オレにされることならって、信頼されて全てを任されたい。
その後で褒めて、甘やかして、とろけさせたい。
そんなふうに思うのは、海老沢だけなんだ。
オレは海老沢に会うまで、いつだってイライラしてた。
小5からいろんな子とつき合ったけど、何かが足りないって、いつも満たされなくて。それがなんだかわからないことに、余計にイライラした。
オレが「残念なイケメン」って呼ばれるようになったのは、今みたいなエロ丸出しなキャラだったからじゃない。いつも不機嫌で感じの悪いガキだったからだ。暴れて校長室送りになったことも、1回や2回じゃない。
誰かに愛されて、信頼されて、オンリーワンだと言われたい。今までの彼女たちにそれが欠けていたわけじゃないのに、なんでか満たされなくて。
この子だけを守りたい、守って、支配して、オレだけのものにしたい。
そんな風に思える子に、巡り会えなくて。
中学3年の保健体育の授業で、DomとSubが共依存関係にあると知って、オレはやっとイライラの原因がわかった。
そうかオレは、自分のSubを見つけないと、精神が安定しないのかって。
オレだけに全てを委ねる、オレだけのSub。そのたった一人とパートナーになれる日を、オレはずっと待ってたんだ。
海老沢に初めて会ったときも、正直、ビビッときたりはしなかった。なんとなくつるむようになった友達の一人で、本当にただの友達。Subだってことはすぐ分かったけど、別にだからどうというわけじゃなかった。
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