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24.
静かな寝息を立てる海老沢に、パンツを履かせて薄い布団をかけてやる。オレも軽く身体を拭いて、部屋着を着た。
ベッドの端に座り、柔らかい髪に触れる。頭を撫でると、海老沢が眠ったままでうっすら微笑んだ。
今日は、撫でてやれなかったな……
それに、褒めてもやってない。
意地はって言わないから、褒めてやれなかった。
でも、2時間もがんばったんだから、寝落ちする前に褒めてやれば良かったよな。
Subは、Domに服従したことを褒めてもらえないと、欲求不満になる。ただ従わせるだけじゃダメなんだ。Subは性癖を満たす道具じゃない。
今日のオレは、全然ダメだったな……
もし海老沢のSub性が強かったら、満たされない承認欲求で不安にさせてしまったかもしれない。
DomやSubの性質の強さには個人差があると、オレは思ってる。
例えば、Domが黒で、Subが白。そしてNormalが透明だとすると、海老沢はたぶん白濁。
ちょうどヨーグルト味のゼリー飲料の色だ。
限りなくNormal寄りのSub。そこに、海老沢がいるんだと思う。
Subらしい性質の薄い海老沢は、自分がそれとは気付きにくい。だから思春期を過ぎた今でも自覚はないし、決まったDomがいなくても精神の安定を欠くことがなかったんだろう。
そんな相手を好きになってしまったオレは、Domの本能を、湧き上がる支配欲や嗜虐性を、抑え込んでいなきゃいけない。
本人にSubとしての自覚があれば、海老沢のSub性がもっと強ければ、Domに支配されることはあいつにとっても至高の喜びであるはずで。
オレだって、その欲求を抑え込む必要はないのに。
これをしたら、怖がらせる?
もっとしたら、逃げられる?
これ以上求めたら、離れていってしまうだろうか……
そんな不安との、毎日が闘い。
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