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30.
こうなるとわかってたから、ずっと気をつけてたのに……
激しい後悔に、背筋が冷える。
鳥肌がおさまらない身体が、一人のベッドの上で震えていた。
親指の傷は、小さなかさぶたになった。
オレは一日に何度も、そのかさぶたを眺めたり、舐めたり、治って消えてしまわないように剥がしたりした。
これが消えたら、海老沢との繋がりなんか、何にもないから。
海老沢が怒ってうちを出て行って、3日が経った。
我ながらヘタレだなって思うけど、オレはただ塞ぎ込むだけで、何にもできないでいる。
何度も、何度も、ラインのメッセージを作っては消した。
オレが悪かった
あんなこと言うつもりじゃなかった
ひどいこと言ってごめん
ひどいことしてごめん
電話していい?
会いたい
息ができない
一個も、送れなかった。
自分が海老沢の首を絞めたときの手の感触が、忘れられない。落ちる寸前の、恐怖に見開いた海老沢の目も。意識を取り戻すまでの、死にそうな不安も。
オレさえ我慢できるなら、もう海老沢には関わらない方がいいんじゃないかとさえ、考えていたんだ。
会いたくて、触りたくて、おかしくなりそうだったけど。
きっとそれはオレの方だけだから。
会いたい、と言いながら、オレたちは、次の日も、その次の日も、普通に学校で会っていた。いつも通り5人で弁当を食って、バカな話して、笑って。
まるでいつも通り。
でも、海老沢とは一度も目が合わなかった。
そりゃあ、ツンツンされて話もできないよりは、ずっとマシだ。でも、その吹っ切れたような態度に、無視されるよりも強い拒絶を感じて、オレは焦った。どうしようもなくイライラして、何にも手につかない。
このまま友達に戻るなんて、やっぱりオレには耐えられない。
[ちゃんと話したい。今日ウチ来れない?]
崖から飛び降りる覚悟でラインしたら、思いもよらない返事が返ってきた。
[今日俺合コンだから無理]
俺は教室の椅子で脱力して、天を仰いだ。
溜息しか出なかった。
*****
「え、お前ら合コンじゃねぇの?」
海老沢はもう下校したのに、柳瀬たちが教室でしゃべってるのを見てオレは驚いた。
海老沢が合コンと言ったのは嘘だったのか。
海老沢曰く「無駄イケメン」のオレだけがハブられたのかと思っていたのに。
「あぁ、海老沢?あいつC組の大村に誘われてったぜ?あいつら、同中 なんだろ?」
柳瀬は椅子をギコギコと漕ぎながら答えた。
大村というやつをオレは知らない。海老沢から名前を聞いたこともなかった。
オレら以外に、合コンに誘われるような仲のやつがいるってだけで、イラッとする。
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