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32. ドロップ
大村に誘われて行った合コンで、俺はガチでびっくりした。その相手が、大学生の、男三人だったからだ。
えっなに、どーゆーこと?
もしかして、俺が本郷とそーゆーことしてるって、バレてんの?
でも別に俺、男が好きってわけじゃないんだけど……
てゆうか、知られてんの?
なんで?
おたおたしてるのは俺だけで、大村はもちろん、一緒に来た山脇も、向こうの三人も、穏やかに挨拶なんかしてる。
合コンに誘われて、渡りに船っていうか、女の子と騒いだりして気分上げようとか思って詳しい話も聞かなかった俺も悪いけど。
大村とは同中だってだけで、特別仲よかったわけじゃないから、そっちの奴だなんて知らなかった。
山脇はなんか、ちっちゃくて髪はふわふわで、大学生を見上げる目がキラキラしてて、そういう雰囲気ありありだ。
てゆうか俺も、もしかしてそういう気 がある奴に見えんの?
ぐるぐる考えている間に、メシ食ってからカラオケに行こうってことになったらしく、俺は同じ方向に歩き出したみんなの後ろを戸惑いながら着いていくしかなかった。
「待ち合わせの前に、着替えとこう」
大村にそう言われて、駅のトイレで私服に着替えた意味がやっと分かった。
「腹へったなー」
って誰かが言いながら入った店はチェーンの居酒屋で、たぶん制服のままじゃ入れない店だった。
着替え持って来いよって大村に言われて、女子は制服も可愛いと思うけどなって、ちょっと残念に思った俺はバカだったんだ。
「星那 くん、そろそろ次の来るから、それ飲んじゃって?」
さっきから俺の隣には、中川さんって人がずっと貼りついてる。下の名前を聞かれたから普通に答えたら、それ以来ずっと、やたらと名前で呼んでくるから変な感じだ。
背が高くて、短髪が似合ってる。本郷とは違うタイプの、イケメン…… なんだと思う。
ずっとにこにこしてて、優しそうな、感じのいい人。
なのに、なんかぞわぞわするのはなんでだろう?
覗き込むみたいに、やたらと目を合わせてこようとする喋り方のせい?
俺は中川さんに言われたまま、背伸びして頼んだ生ビールの残りを飲み干した。苦くて、全然美味しくない。でも、一人だけ烏龍茶って言える雰囲気でもなかったんだ。
そういえば今日、夕飯いらないって言って来なかったな……
ときどき腿が触るくらい近くに座ってる中川さんの距離感にちょっと息苦しさを感じて、
「ちょっと、家に電話してきます」
そう言って席を立とうとしたら、パッと手首を掴まれた。
「座って」
笑顔で言われたのに。
膝の力が抜けて、立っていられなくなった。
内腿がガクガクする。
なんだこれ…… ?
自分の意思でそうしたんじゃないのに、椅子にぺたんと戻った俺の腿を、中川さんの手がスッと撫でた。
「僕がいいって言うまで、立っちゃダメだよ。わかったね?」
真っ直ぐに目を見ながら、そう言われて。
俺は条件反射みたいに頷いた。
「いい子だね、星那くん。」
引き寄せられた耳元で低く囁かれ、背中がぞわって寒くなった。
なのに。
腹の下の方が、勝手に熱くなったんだ。
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