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居酒屋に入るときは3対3だった俺たちは、カラオケに移動する時点ではすっかり1対1の3組に分かれていた。
ガタイのいい大学生と大村は、楽しそうに話しながら。
髪がメッシュの大学生と山脇は、もうつきあってるみたいに手を繋いで。
俺はホントはもう帰りたかったのに、中川さんに「おいで」って言われたら、どうしてか断れなくて。
店から一番近いカラオケに、6人で歩いて行った。
カラオケは嫌いじゃない。
男同士で来ると、別に上手いとか下手とか関係ないし、酒なんかなくてもバカみたいに楽しいから柳瀬たちともときどき来る。
たいしてがんばったわけでもない、テストの打ち上げとか称して。
歌って帰るだけ。
メンバーがいつもと違うだけ。
俺は別に、決まったやつらとしか遊べないわけじゃない。
大学生になったら、新しい友達や先輩とも、うまくやってかなきゃなんないんだし。
俺は心の中でそんなふうに唱えながら、せっかく来たんだし楽しく歌って帰ろうって、思おうとした。
部屋に入った時から時間はカウントされてるのに、まずドリンクを頼もうとかってメニュー回して、誰も曲を入れようとしない。
放置されてるリモコンが、すごく気になる。
いつものメンバーでカラオケに行くときは、まず本郷が俺の好きな曲を入れてくれて。しかも上手いことハモってくれるから歌い出しからめっちゃ気持ちよくて……
その歌の間に加古と柳瀬が自分らの曲入れて、後は順番に1曲ずつ回すのがルーチン。だいたい部活でいない秋山が入っても、その流れは変わらない。
だからこんな無駄時間みたいなのが、たいしたことじゃないのにすごくもったいない感じがする。
バイトとかで金のある大学生の余裕、なのかもしれないけど。
それにドリンクは、いつも本郷が烏龍茶とカルピスソーダを頼んで、俺はその時の気分で好きな方を飲んで、俺が取らなかった方をあいつが飲むんだ。
それが当たり前になってたから、こんなにいろんなドリンクの種類があるなんて知らなかった。
メニュー見せられて、どれにする?って聞かれても、いっぱいありすぎてわかんねぇ。カラオケで酒飲んだりしたことないし。
決められない俺のために中川さんが選んでくれた何とかって酒は、ちょっと苦くてやたら甘くて、あんま好きな味じゃなかった。柑橘系、っていうのだと思うけど、俺はマーマレードに入ってるみかんの皮が苦手なんだ。
山脇とくっついてる中川さんの友達が、聞き慣れた曲を歌う。
あ、これ本郷がよく歌うやつだ。本郷の方がずっと上手い。本郷は、歌うときに微妙にフラットするから時々あれっと思う。特別うまいわけじゃないけど、なんか聴かせるんだよな。
あぁ、なんか、やっぱり今日、あんま楽しくないな……
そんなふうに思っているうちに、大音量の中にいるのに眠くなってきた。
居酒屋でビールとサワー2杯、それからさっきの甘いオレンジの酒…… 結構飲んだかな……
ちょっとだけ、寝てもいいのかな……
女子でもないんだし、酒飲んでちょっと寝たって、別にどうなるわけでもない。
そう思ってた俺は、ホント、バカだったと思う。
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