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「ちょ…… っと待て、なんでそれ買うの?」 俺がカゴに入れたゼリー飲料を見て、本郷が目をパチパチさせた。 「なんで?俺がこれ買うのなんか変?」 「いや…… 別に、だ、けど…… 」 困惑顔の本郷を置いて、俺はさっさと飲み物を取りに行く。 黒豆茶、ゴーヤ茶、…… たんぽぽ茶はないな。 ペットボトルをぽいぽいカゴに投入する俺を、本郷がじっと見てる。 内心すげぇ恥ずかしい。でも、それに気づかれないように、普通の顔でちょっと見上げた。 「昼メシも買ってくだろ?おまえ何にする?」 「え、あ…… 見、てから、決める…… 」 「そうだな。俺もそうする。」 パスタとかパンとか、適当にそれぞれ選んでカゴに入れた。その間も、会計の時も、本郷の視線がちらちら俺に注がれた。 そういえばこんなやりとり、春にこのコンビニでしたよな。今日はおどおどしてるのが本郷の方で、あの時とはまるで逆だ。 「結局今年、花見は行けなかったよな。」 財布を出しながらそう言うと、本郷はそれを手で制しただけで、返事をしなかった。 本郷家最寄りのコンビニで買い物をした俺らは、午前中から本気で照射してくる真夏の太陽の中、同じ歩幅でちんたら歩いた。 朝から風呂を占領して(みそぎ)してきた身体はすっかり汗だくだ。 本郷の部屋は、気持ちよく冷えていた。 駅まで俺を迎えに来る前にエアコンをつけといてくれたらしい。 「あー、やべえ、天国。」 俺は掛け布団のないベッドにダイブした。冷えたシーツが火照った肌に気持ちいい。自分の体温でぬるくなったところから手脚をずらしながら涼を満喫していると、ベッドの端に座った本郷が、そっと手を繋いできた。 「海老沢。」 身体を横向きにすると、本郷は真面目な顔で覗き込んでいる。 「何考えてんの?」 本郷だって、俺が「飲む気で」ゼリー飲料を買ったわけじゃないことくらい、わかってるはずだ。 ニヤニヤ笑いながら脱がしてくるか、茶化してくるかなって思ってたけど…… 俺は身体を起こして、本郷に向き合って座った。 「おまえ最近、俺のこと心配しすぎなんだよ。」 繋いだままの本郷の手が、ピクリと揺れた。 「明るいうちから送り迎えしたがるし…… 電車代だって、けっこうバカになんないだろ?ゴムとかもおまえが買ってくれてるし、さっきのだって、ワリカンにすればいいじゃん。俺らバイトもしてないんだから、そういうーー 」 「ちょ、待てって。そういう話じゃなくて。」 「いいから聞けよ。てゆうかだから、カネの話じゃなくて…… おまえがそうやって過保護な親みたいに俺にひっついてんのは、俺がまたどっかのDomに引っかかったりしないか、心配してんだろ?」 本郷は黙った。肯定していいものか、迷ってる顔をしている。でも俺はそれについて問答したいわけじゃないから、続けた。 「前は駅まで迎えに来るとかまでしなかったじゃん。おまえがびびってんの、こないだのあれからだろ、本屋のさ。」

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