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顔を歪めた本郷に、ダイナミクスで悩んでたのは俺だけじゃないんだなって、思った。
本郷は俺よりもっとずっと長い間、もしかしたら俺と会う前から、「好き」と「いじめたい」の間で苦しんでいたのかもしれない。
今までの彼女…… 何人いたかとか知らないけど、いつも長続きしなかったのはたぶん、取っ替え引っ替えしてたわけじゃないんだな。
「俺、の…… どこがそんな、好き…… ?」
そんな女子みたいなこと、恥ずかしくて普段なら絶対聞けないけど。黙ってればイケメンで相手に困らない本郷が俺に嫌われたくなくてびびってるとか言われると、やっぱ嬉しいし。
不思議に思うことを、素直に聞いてみた。
「髪とか爪、褒めなくていいとこ。記念日覚えてなくても怒んないし、ラーメンとかとんかつ一緒に食いに行けるとこ。硬いクッキーとか謎のチョコ食わされないし、セックスのとき適当に肘ついても髪の毛巻き込まないのも地味に楽だよな。」
「…… それって、俺がどうっていうか、女子じゃなくて良かっただけの話だよな。」
「うん?女子も好きだよ?オレほんとは巨乳好きだし。でも最近はさ、おっぱいって大きさより感度だなって思うようになってきたんだよな。お前貧乳だけど、感度最高だからそこは我慢するし。」
「貧乳言うな!っつうかいじるな!ひゃ、あ…… っ」
「ほらこれ、すぐ勃つし、勃つとグミみたいで、可愛い。」
Tシャツの上から乳首を舐められて、濡れた布越しの刺激に腰がムズムズする。気持ちいいけど、結局俺にいいところなんかないんじゃんよ、って、ちょっと悲しくなった。
「ん…… っ、んぅ、ん…… 」
少し乱暴に乳首を攻められて、この話はここで終わりなのかと思ったら。
「お前、不満があるとすぐ声に出るのな。」
顔を上げた本郷が、自分こそ不満があるみたいな声でそう言って。
「全部だよ。」
ボソッと、呟いた。
「マジレスさせんなよな」って言いながら、本郷が俺の上で膝立ちになった。顔を隠すみたいに背中を丸めて、自分の奥襟に手をかけて頭を抜く。片手で雑にシャツを脱ぐその仕草が、さまになってて結構好きだ。
これからやるぞって感じに、ゾクゾクする。
照れて少し赤くなった顔をふっと逸らして、本郷がヘッドボードからゴムとローションを取り出した。いつものボトルと、カラフルなゴムの箱。残りはたぶん、2個。
俺がその動きをじっと見てたからだろう。
いつもならそんな確認しないのに、もう「その気」になってるってわかる低い声で、本郷が言った。
「抱くよ?」
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