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「それホントに、後で消せよ…… ?」
俺はパンツを脱ぐ前に、本郷に確認した。
「わーかってるって、ほら早く。」
スマホの画面から目を離さずに、本郷が片手を振って軽く請け負う。俺は不安を抱えながら、さっとパンツを下ろしてベッドの端に座った。
身につけてるのは、首輪 だけ。
でも、この姿勢ならヤバいところは映らないだろうと、本郷が構えるスマホのカメラをチラリと見た。
絶対他人 には見せないから裸の身体を撮影させてほしい。そう頼まれたのはついさっき。パートナーになった記念に、首輪だけを身につけた姿を撮りたいと言われて、相変わらずの変態さに閉口した。
いやだって言ったんだ。
だって携帯の写真なんか、うっかり人に見られることだってあるし。それは無理、ホントに無理、そう言って拒否したら、本郷の出した妥協案が「行為 が終わったら、すぐに消すから」だった。
そして、それならとしぶしぶOKした俺に、後出しジャンケンでねじ込んできやがった追加条件があって。
「そのかわり、動画にするわ。」
残念なイケメンは、最初からそれを狙っていたのかと疑いたくなるような、満足げな笑顔を見せた。
「オッケー。じゃあ、そのまま後ろにゴロンして。」
子ども相手みたいに、裸になった俺に本郷が言う。
ゴロンって……
なんかやだなと思いながら、俺は素直に横になった。背中にあたるレジャーシートが冷たい。
大丈夫。別にこんなの、平気。
だって別に、水泳の着替えとか、修学旅行の風呂とかで、裸なんか見られたりするもんだし。
全然、平気。
平常心を保つために、俺はずっと心の中でそう自分に言い聞かせてたのに。
「膝立てて、M字に開いて。」
本郷は当たり前のように、次の指示を出してきた。
膝を立てて、M字に……
そんなんしたら、全部見えんじゃん。
カメラに、全部映るじゃん……
少し顔を上げて、本郷を見た。俺の足の方に立つ本郷は、スマホを構えて、斜め上から俺を撮ってる。
「海老沢、早く。容量なくなる。」
なんだか事務的な声で急かされて。
俺はフローリングの床についてた足を浮かせて、ベッドの縁に乗せた。
本郷はその正面にしゃがんで、まばたきもせずに画面を見てる。だから、俺が足の間からちょっと顔を上げても、目が合わない。
「命令」されたわけじゃないけど、俺にはわかってる。Domのしたがる行為 に、恥ずかしいところをわざと晒させるってのがあるんだ。
相手にそんなことをさせたら、征服欲が刺激されるってことくらい、俺でもわかる。
俺は今まで、Domとしての本郷が満足してるかなんて、全然気にしてなかった。Domだってことは知ってたけど、性欲以上の部分を満たしてあげようとか、考えたこともなくて。たぶん、俺のために我慢してくれてたんだろうなって思ったから。
これからは…… 少なくとも今日は、絶対無理ってこと以外は俺の方が我慢しようって決めてたんだ。
でも……
「両手でおしり開いて、孔、広げて見せて?」
トーンの下がった声で指示されて、身体が震えた。本郷はじっとスマホを見てる。カメラを通して俺を見てるんだって知ってる。
でも、俺の方からは、本郷の顔は四角く切り取られたみたいに、見えない。
ひどく、寂しい気持ちになった。
「いやだ…… 」
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