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第8話
ミーシェと会って一週間。
私はセックスをやめていた。
嫌われたくないから、見限られたくないから。
しなければ、元の綺麗な身体に戻れる気がした。
そんなわけないのに。
苦しい。
怖い。
気持ち悪い。
不安。
辛い。
切ない。
悲しい。
心憂い。
会いたい。
日毎に負の感情が重なっていく。
「…ミー、シェ……」
その日、久しぶりにしたセックスで、やっと平穏を感じられた。
目を閉じて、ただ揺さぶられて。
それだけなのに、嫌な感情は無くなっていた。
私にはこれが必要だ。
呼吸するみたいに、食事するみたいに。
セックスをしないと、解放されない。
その後に、新たな恐怖がのしかかるって知ってるのに。
不安を消すためにセックスをして、不安がまた増えて、それでセックスをして。
くるくる回ってる。
終わりなんてあるんだろうか。
やっぱり駄目だ。
汚れた身体は汚れたまま。
嫌だ、ミーシェに会いたい。
ラウールって少し低めの落ち着いた声で呼ばれて、ふざけて子供のままだって呆れられて、それで、一緒に笑いたい。
初めてセックスの最中に、耐えきれず相手をミーシェって呼んだ。
すとんって胸に何かが落ちてきて、涙が溢れ出た。
そっか、そういうことだったんだ。
ふふふ、こんなんじゃ、ミーシェに会う資格なんてないや。
自分から友達だって言いながら、こんな浅ましい感情を抱いてた。
馬鹿だなぁ、本当に。
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