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第4話
──次に二人が顔を合わせたのは、初めて出会ってから8日後だった。
発情期でもないのに、皐月は詠月を欲しがって、望み通り詠月は皐月を抱いた──。
初めての時みたいに快楽も快感もきちんとあったのに、体の中にある詠月の熱があの時とは違って、小さな違和感に似たものが、皐月の心の中に気泡みたいにぷくりと小さく膨れた。
ベッドの中で片肘をついて薄く笑って自分を見上げている男の心の中が皐月にはわからなかった──。
詠月はαだから自分を抱くのかと、ただ、憂いた──。
そして、番になって欲しいと詠月から言ったくせに、未だに詠月は皐月に印をつけようとしない──。
皐月はまだ詠月の番になれていない──。
番になればあの施設から出て、一緒にいられる──。
死ぬまでずっと、傍で生きていける──。
なのに、詠月はそれをまだしない……。
詠月は自分以外にも番候補がいるのだろうと皐月は考えた。詠月はαだ。しかもかなり家柄の良い男だと他から聞いた。どこの馬の骨かもわらかないような皐月では、詠月の家族が反対しているのかもしれないし、あの時は思わずそう言ってしまっただけで、フェロモンで冷静さを欠いていただけなのかもしれない──。
「俺……お風呂入る……」
ヨロヨロと皐月は体を起こしてひとりバスルームに向かう。詠月は眉ひとつ動かさずにその細い背中を見送った。
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