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第6話

「なんで、俺のこと……番にしてくれないんですか……」  俯いたままで皐月は弱々しく、細い声で嘆いた。 「ほんとは……もう、興味なくなったんですか……。なら、ちゃんと……そう言って欲しい……」  フーッと、詠月は皐月の頭の上で溜め息をつく。その表情は腕の中の皐月からは見えなかった。 「──君は恋がしたかったんじゃないの……?」 「……こんなに……、苦しいなら、もう辞めたい……。もぅ……辞める……」 「──本気で言ってるの?」  静かに鋭い声を出した詠月の瞳に先ほどまでの笑顔はなかった。  何も読み取れない瞳でただジッと、皐月を眺めている。 「──帰る……」  皐月は流れる涙も気に留めず、詠月の体からすり抜けた。急いで身支度を済ませ、濡れた髪もろくに乾かさず、逃げるように部屋を後にした。  その弱った背中を詠月が追いかけてくることはなかった──。

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