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第7話

「はぁ?! アンタどんなけ夢見てんの?!」  左薬指に大きなダイヤのついた指輪を光らせ、瑠璃(るり)はがっくりと呆れた声を出した。  詠月と出会うきっかけをくれたΩ友達の彼女は、先日10歳上のαと番になり、今や新妻だ。 「文句言うだけに来たんなら帰れよ、瑠璃。俺、仕事あんの」 「何よ、ほんの数時間くらい。毎日家にいるんだから仕事なんてやろうと思えばいつでも出来んでしょ」  瑠璃は正論しか言わないから腹が立つ。と心の中で皐月はやつ当たる。 「あのねー、アンタ。うちらはΩなんだよ。脳味噌で考えても本能には逆らえない。主導権なんて持てないんだよ」    瑠璃は、右人差し指を皐月の鼻先に当たるほど近くでくるくると回す。ジトリとした目で皐月はその指を軽くはたいた。  年上のαに合わせてなのか、かつては長く、派手に色付いていた爪も今や薄いピンク色の丸いものになり、メイクも自然で控え目だ。 「呼び方なんてなんでも良いでしょ。恋でも、そうでなくても、アンタはそのαに惹かれたんだから。それが全てじゃない」 「──あの人には……多分俺じゃなかったんだ……」  皐月は心細げに膝を抱え、下唇をぎゅっと噛んだ。 「複数のΩと番になるαだって中にはいるわよ。昔からの由緒あるお家柄なら尚更。それにその中の一人になれたんなら良かったと思いなよ、アンタの人生保障されたのよ?」 「俺は……好きな人と……一緒に、番になりたい……それで最期まで傍にいたいんだ……」 「皐月、心なんて後から着いてくる。あたしたちに必要なのは自由に生きれる未来だよ。施設(ココ)で死ぬまで生活する気なの?!」  理論でどうにかしたがる皐月に痺れを切らしたのか、瑠璃の口調は勝手に強くなる。 「俺は……、自分の母親みたいになるのは嫌なんだ……」 「アンタの……お母さん……? なに……?」 「……俺のお母さんは……好きな人と一緒になれなくて……苦しんで死んだから……」  突然、呻くように皐月は声を漏らした。

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