2 / 19
第2話
大学時代の後輩、入野 翼 が俺の元に駆け込んできたのは10分程前。
そして泣きついているのが現在の状態だ。
「はぁ、それでお前が間違えて発注数が少なくて先方から連絡がきた……とそれで間違いないか」
「そうです………」
「上司に報告は?」
「……………じでま゙ぜん゙っ」
「ったく、謝罪に行くんだろ?俺も行ってやるからまず上司に報告しろ」
丁度この後は急ぎの予定は何にもなかったし、こいつ一人で行かせるより俺も行った方が安心する。
「それで、足りない分は?」
「えっと……謝罪の前に俺が取りに行って、そのまま渡そうと……」
「なら急ぐぞ、先方も困ってるかもしんねえから」
「はいっ!やっぱ先輩頼りになります!ありがとうございます!」
一気に元気になった後輩、翼に落胆しつつジャケットを羽織って準備をしてから会社を出た。
外の空気を吸って、気分転換をする。
気分転換が取引会社への謝罪って気持ちは全然軽くならないが、ずっと中にいると気が滅入って仕方ない。
元々は外回りの方が好きだった、適度にサボれるし。
*
「本当に申し訳ありません。今後はこのようなことがないようこちらでも指導していきますので………」
「こ、こ、今回は誠に申し訳ありませんでしたっ!!」
「いやいや、急ぎでは無かったのでそんなに謝らなくていいんですよ、わざわざ届けて頂き有難うございます」
足りなかった分を無事届けて、謝罪をすると先方は良い方で気にしないように言ってくれた。
翼はよくこういうミスをしては謝罪をしに外へ行っている。
それでもまだミスが減らないのはどうしてなのか考えても答えが出ないのは何故だろうか。
「腹減った、どっかで食べてくか」
「俺の奢り………ですかね」
「はっ、いいよ俺が奢ってやる」
「やったぁー!!!」
謝罪をした会社の駅の近くにあったカフェに入って昼食を摂ることにした。
「うわぁ、すご、みてみて先輩!卵がふわふわしてて美味しそう………!」
「すげーじゃん、卵ふわふわで良かったなぁ」
「うん…っ!」
翼は卵料理に目がない。
卵が入っていれば大抵のものはなんでも食べるし、加工品もお菓子も大好きだ。
だから頼んだのはオムライス。
開くタイプのやつで、切って卵が広がる瞬間の顔は嬉しそうで見るのが楽しい。
「うっまぁ、先輩も食べますか?」
「いやいいよ、いっぱい食べな」
「ありがとうございます!」
俺は自分の頼んだサンドイッチセットを食べながら曇り模様になっていく空をぼんやりと見ていた。
先に食べ終えた翼はトイレに行きたいと言って席を立ち、それからなかなか戻ってこない。
様子を見に行こうかと心配になり始めたところでひょっこり戻ってきて、それから会計を済ませ、会社に戻るため近くに置いておいた車に乗った。
運転は苦手で下手だとよく言われるから翼に任せ、外の景色を眺めた。
ともだちにシェアしよう!