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第4話
「……っ、ぅ、………っ!」
「はぁ…………逆にやる気でねえな」
千榛が崚の胸を叩いてやっと唇を離したかと思うと今度はだるそうにそう呟いた。
千榛は普段キリッとしていて出来る男、みたいなイメージを持たれることが多いが快感には弱すぎて、その辺りは少し緩い。
今も顔は火照り、とろんとした瞳をしている。
「…定時には迎えに行くから」
「……はい」
定時には、崚が迎えに来てくれるんだ。
それまで仕事、ちゃんとやらなきゃ。
「部署まで送ってくから」
「………あ、ありがとう」
*
「じゃ、またな」
「………」
社長の崚に自分のデスクまで送り届けてもらい、椅子に座った。
デスクの上にあるパソコンに向き合う。
ちゃんと、仕事しなきゃ。
そう思いながらも集中出来なくて、コーヒーを飲んで落ち着こうとする。
「御影さん、チェックお願いしまーす」
「………ん、わかった」
チェック、チェック。
飲んでいたコーヒーのマグカップを置いてそれを受け取った。
「これ、急ぎ?」
「あ、いや全然です」
「ん、了解」
急ぎじゃないならゆっくりでいいや。
そう思いながら、書類のチェックをした。
いつもなら5分以内には終わるけど、今日はその倍くらいかかったかな。
「あ、ありがとうございます」
「はい.........おつかれ」
(部長かわいい〜〜〜社長のせいかな………)
(声可愛い、きっと社長のせいだ………)
(絶対社長だ……………)
社員達は千榛がこうなる理由が分かっていた。
これで何度目かと、記憶を辿って行っても答えは出てこない。
それくらい頻繁にこういうことがあるんだ。
会社でそれを黙認(?)しているのは普段の二人はしっかりしていて自分たちより仕事ができるから。
それに何だか憎めないのだ。
特に女性社員には可愛いと認識されていて、癒しとして重宝されている。
*
「よし、もう大丈夫だ」
そうして時間はかかったが、千榛は通常通り業務に取り掛かった。
清涼剤を噛み砕き頭を覚醒させる。
「お疲れ様です、さっきはうちの入野がすみませんでした」
そして休憩時間にやってきたのは。
「あぁ、楠本 か、お疲れ様。あんまり怒らないでやって結構反省してたから」
翼の上司、楠本だった。
「お詫びに、ココアでもどうぞ」
「有難くもらっとく、サンキュ」
コーヒーより好きな甘いココア。
ケーキもジュースも好きだし、甘いものならなんでも食べられる。
崚さんは甘いものが苦手なのか、自分の貰い物をよく俺にくれる。
「入野はどうしたらミスが減るんでしょう。どうにか方法はありませんかね」
「俺の知る限り無い、と思う」
「うわぁああん!楠本さんパソコン壊れましたぁぁああ!」
聞こえてくる声に二人で顔を見合わせて笑った。
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