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第18話 崚side

** ある夜、偶然目を覚ました時、隣に千榛がいなかった。 それで千榛を探してキッチンの方に行ったら、眠れなくて少し不機嫌そうな千榛がいて、薬を飲もうとしていた。 それに気がついた俺は、薬を使うのはあんまり体に良くないと思ってホットミルクを作って千榛に飲ませてあげた。 そしたら千榛は嬉しそうに、そわそわしてマグカップを握りしめて飲んでくれた。 それから薬も見たこと無かったし不眠症は治ったのか、なんて思ってたんだけど。 昨日の夜、実は見てしまった。 千榛が自分でホットミルクを作って飲んでいるのを。 あの時の俺の言葉をちゃんと今でも覚えててくれてるんだ、って嬉しくなっていつもより千榛にくっついて寝た。 ……… 「…っていうことがあったんだよ」 「…………はい」 「可愛すぎる………やばい」 「それは嬉しいですね。さぁ社長、今日もやることは沢山ありますので」 * 「先輩、そろそろ行きますか?」 「……もうそんな時間か、気が付かなかったわ。ありがと」 実は、大学時代の後輩は入野の他にあと一人いる。 それが平坂(ひらさか) 紗也(さや) 。 俺の一個下で、入野より断然仕事が出来てとにかく優秀だ。 性格は面倒くさがりっぽくて、でも自分のやることは最後まできっちり終わらせてくれる。 俺の心情もよく理解してくれるから、気分が乗らない時はそっとしておいてくれるし、むしろ話を聞いて欲しい時はとことん聞いてくれる。 こんな出来た後輩が入社してきてくれたことにはただ有難いとしか言えない。 崚さんは、そんな紗也のことを良く思っていない。 大方、俺たちが仲良くしているのが気に入らないんだろうなとは思うけど、紗也との関係を変えるつもりはない俺の気持ちも理解してるらしい。 紗也と一緒に他社との打ち合わせ会議に参加することになっていた俺は、身支度を整えて会社を出た。 * 「紗也、腹減ったな」 「そうですね」 会議室らしき場所に待たされること数十分。 先方は何をしているんだろうか。 忙しいのは理解してるが、俺達も暇じゃない。 ポケットに入れていたチョコを口の中に放り投げるのはこれで何度目だろうか。 チョコの代わりに増えるものは包み紙ばかり。 紗也はもう要らないです、と言ってチョコを受け取るのを断った。 「お待たせして申し訳ございません」 そう言って人がやって来たのは、10個目のチョコを食べ終えて11個目を食べようか迷っていた時だった。 現れたのは若そうな好青年と四十代くらいの身なりの整った男性の二人だった。 「いえ、こちらこそわざわざお時間を作って頂きありがとうございます」 やっと打ち合わせが始められるようだ。 もう既に疲労が出てきているが、今はとにかく早く終わらせて昼飯が食べたい。 「早速ですが今回の企画説明を………」 相手の話に相槌を打ちながらメモをとったりして話し合いは進められていった。

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