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名前で呼んで
「おはよ、有馬(ゆうま)」
駅から学校に向かって歩いていると、後ろから声を掛けられた。堀田遥清(ほったはるき)が爽やかに笑いかけて僕の隣に並んでくる。
「おはよう、遥清」
遥清は「ええ天気やな」と空を見上げた。イケメンはすごい、それだけでもサマになる。
「なあ、有馬はサッカーとバレー、どっちが得意?」
「え、どっちも得意じゃないけど」
「そやけど、どっちか絶対出なあかんで」
「何の話?」
「来週の球技大会」
「球技大会? それがサッカーとバレー?」
「そう。俺と一緒のに出る? あ、でも応援でじっくり見たい気もするしなー」
遥清はそう言いながら首を傾げている。背が高くて運動神経のいい遥清はきっとすごく活躍するんだろう。それなのに応援もしっかりするつもりなんて偉いなあと思う。
今日は暑いくらいで、学校の周囲に植えられた桜並木の葉からこぼれてくる陽射しがまぶしい。数日前に遥清に誘われて造幣局の八重桜を見に行ったけど、もうあれも散ったかな。
「ん。やっぱ、ゆっくり見よかな」
遥清は何か決めたようで、にっと笑うと「有馬はバレーにしとき。サッカーは走るの大変やから」とアドバイスをくれた。
うん、確かに普段からそんなに運動していない僕にサッカーは無理かもしれない。
「わかった、そうするよ。教えてくれてありがとう」
「ええねん。つーか、ホンマ素直すぎっちゅーか…、もう…くぅ」
何か言っているけどちょうど校門に着いて、学級委員長の菅原智嗣(すがわらさとし)が声を掛けてきた。
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