「有馬、押しピン取って」 「え？」 「教卓に箱があるやろ、箱ごとちょうだい」 「うん？」 　遥清に言われて教卓の上を見た。 　教卓の上には輪ゴムの箱やマッキ－の箱、クリップの箱などがあるけれど…。 「遥清、押しピンって何？」 「え、押しピン、知らんの？」 　驚愕といった顔で遥清が振り向いた。周りのクラスメイトもびっくりした顔でこっちを見ている。 「ほな中原くん、これ、何て言うの？」 　近くの女子が取った透明な箱の中は。 「それは画びょう」 　ええーーと驚きの声が複数上がって、僕の方がびっくりした。 「え、画びょうじゃないの？」 「いや、通じるで。言うたことないけど」 「画びょうか、そういやそうやな」 「うん、言葉としては知っとる」 「画びょうって言わないの？」 「言わへんなー」 「押しピンやんな」 「うん、押しピン」 「そうなんだ。初めて聞いた」 「そうなん？　え、これ大阪弁？」