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「あ、聞いたことある。ケンミンショーでやってた!」 「そうそう、関西しか使わんねんて」  わいわい言いながら、作業を再開する。  4班に分かれて社会の授業の発表ポスターを作っているから、教室内はとても賑やかだ。 「中原くん、大阪に来て、ほかにびっくりしたことってある?」  さっきの女子が楽しそうな顔で訊いてきた。 「えー、何だろ。いろいろびっくりするけど……」  日常のささいなところに驚くことが多い。その時はびっくりするけど、すぐ忘れてしまうことがほとんどだ。 「電車のなかで本当に「痴漢あかん!」ってポスター見たこととか、駅のホームで知らないおばさんがいきなり飴くれたこととかかなあ」 「あ、大阪のおばちゃんの秘技「アメちゃん配り」に遭遇したんやな」  なにその全然強くなさそうな技。おかしくてくすくす笑うと、後ろから腕を回された。いつものように遥清がくしゃくしゃと僕の髪を撫でる。 「有馬はかわいいから、ついアメちゃんあげたくなるんやろ」 「てゆうか、知らない人にもくれるんだね」 「大阪のおばはんは必ずアメ持っとるからな」 「あれは謎やな、うちのおかんも持ってるけど」 「うちもやで」 「こないだ、大原んちのおばちゃんに会うたら、やっぱりアメくれたで」 「なー、あれはそういう習性やろ」 「いつから身につくんやろな」 「じゃあ、高校生は配らないの?」  そう訊いたら、どっとみんなが笑った。  え、そんなおかしなこと言った?

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