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Page5:ニートの朝
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「んー…っ?」
朝、けたたましい音が部屋に鳴り響き、眉間にシワを寄せながら少し目を開ける。
「……っうわぁ!」
「…ん…。」
何故か目の前にシュンくんの寝顔があって、慌てて飛び起きた。
なんでシュンくんが隣に寝てるんだっけ!?とドキドキと煩く鳴る胸に手を当て、ぐるぐる思考を巡らせる。
「…ん〜…る、さい…。」
「…あ、あの、シュンくん…?」
「ん…?……っうわ!!」
未だに鳴り続けるアラームに、やっとシュンくんも目を開けた。そして、俺と同じく飛び起きて、驚いた顔して俺を見る。
「えっ、あれ!?僕、なんでここに!?」
「いや、それはわかんないけど…、起きたら隣にいて…。」
「うわあ…ごめんなさい…!!」
「や、全然大丈夫ですから!ほら、あの、昨日少し寒かったですし!一緒に寝たら温かったんで、全然大丈夫でしたから!」
土下座しそうな勢いで謝るシュンくんに焦って、フォローを入れる俺も何故か敬語になってしまった。シュンくんは眉毛をさげながら今も、すいませんを連呼している。
「ほんと気にすることじゃないから!寝惚けることくらい誰にだってあるし…!あっそうだ、そろそろ着替えて下行こう?シュンくん学校あるでしょ?朝ごはん食べなきゃ!」
「…はい…。」
どこか気恥ずかしそうな感じで落ち込むシュンくんの気持ちを切り替えさせようと話題を変え、着替えを済ませて顔を洗ってからリビングへ行った。
「あら、二人とも起きたのね!おはよう!」
「おはよー。」
「おはようございます。」
テーブルの上には目玉焼きトーストとサラダが二つずつ置いてあって、それぞれ席に座り、手を合わせてから食べ始める。
向かいに座るシュンくんをチラリと盗み見て、この人と家族になったんだな〜と、まだ実感が湧かない頭でボンヤリ思った。
「じゃあ、行ってくるわね。」
「あいあい、いってらっしゃい〜。」
「いってらっしゃい。」
仕事に行く母さんを見送ってから間も無く、シュンくんも学校へ行ってしまった。
家に一人残された俺は、とりあえず掃除をしようと部屋に戻ったのに、気が付けば漫画を読んでいて。
「はぁ…、やっぱ何回読んでもこのラストは感動する…。」
お気に入りの少年漫画を読み終えて、感動の余韻に浸りながらようやく掃除をした。
「はぁ〜、昼過ぎかぁ。なにしようかな。」
することがなくなった俺は、リビングのソファーに横になる。普段のこの時間は、いかがわしい本を読んだりしてるけど、シュンくんと同室となった今、下手にムラッとして自慰に耽ると、また見られる可能性がある。
だって、大学生って受ける講義と受けない講義があるじゃん?もしかしたら午前とかで終わるかもしれないし?今帰宅途中かもしれないし?ってかどこの大学に通ってるのかとか、ここから遠いのかすらわからないし…。…俺、シュンくんのこと全然知らないんだなぁ…って、当たり前か。
「…コンビニでも行こうかな。」
お腹空いたついでにと、財布を持って家を出た。
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