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Page7:初めましてどちら様

「ソウ、お待たせ。」 「おう、来たか…って、誰?」 コンビニの駐車場の隅でしゃがみながらスマホを弄っていたソウに声をかけると、嬉しそうにパッと顔を上げる。そして、ソウの視線はすぐにシュンくんに向き、小首を傾げた。 「あ、こちら…えと、俺の…、」 「昨日、ナオくんと兄弟になりました。シュンと言います。」 紹介しようとした俺の言葉を遮って、シュンくんは一歩前に出て自己紹介をする。 本当はソウに会わせるつもりはなかったが、コンビニについても俺の隣にいるから、自然とこうなってしまった。 「は?兄弟?…え、麻衣子さん(母さんの名前)再婚したの?」 「うん。長年交際してて、一昨日再婚したって聞いて…。それに昨日までシュンくんのこと知らなかったんだよね。」 「ふーん、そうなんだ。あ、俺は本山奏(もとやま そう)。小中、ナオと一緒だったんだ。」 「そうなんですか、よろしくお願いします。」 ソウも自己紹介して二人の会話は終了する。 「…あ、シュンくん、コンビニで買う物あるんだっけ?俺たち外にいるから選んできていいよ。」 「…わかりました。じゃあ行ってきます。」 そう言ってシュンくんは微笑んでコンビニの中へ入って行き、その背中を見送りながら俺たちは再び駐車場の隅のスペースにしゃがんで、ソウは少し遅めの昼ご飯を食べ始める。 「そういえば、連絡先教えてよ。中学の時、まだ携帯とか持ってなかったし。」 「そうだったね。…あ、急いで出て来たからスマホ家に忘れた。番号言うから、とりあえずそれでもいい?」 「いいよ、バイト終わったら電話するわ。」 おにぎりを頬張りながら、ソウはスマホを取り出し、俺の言う番号を登録した。 「…なぁ。」 「ん?」 「兄弟って言ってもさ、知り合って間もないんだろ?どんな感じなの?」 「んー、まぁ……うん。」 なんか思い出してはいけない記憶を呼び覚ましてしまいそうになり、遠い目をする。 「なんだよ。」 「いや、…うーん、まだぎこちない感じはするけど、部屋も一緒だし、数日経てば慣れるんじゃないかなぁ。」 「え、部屋一緒なの?」 「うん。俺の部屋ソファーベッドあるし、シュンくんの部屋にするはずだった所、まだ片付けれてなくてさ。」 「…ふーん。」 「まぁ、なんだ、悪い人ではないし…むしろいい人だから良かった。」 「そっか。」 へらっと笑うと、ソウも優しく微笑む。 「うん、それにシュンくんって、なんか…凄くたまに、懐かしくなる。」 今でも、綺麗で優しく微笑むシュンくんが忘れられない。…なんて、初めて会ったはずなのに、おかしいかな。 「…へえ。不思議だな。」 「あっ!あと、今日なんて寝惚けて俺の布団入ってきてさ!朝起きてびっくりしたけど、シュンくんもびっくりしてて…、今思い出すとちょっとおもしろいな…ははは。」 「………。」 「…?ソウ?どうし…」 「お待たせしました。」 「あ、シュンくん…。」 不意に黙り込んだソウを不思議に思って声をかけようとした時、それを遮るかのように頭上から声がして、見上げるとシュンくんが立っていた。 「まだ帰りません?」 「え、あ…うん。ごめん、先に帰っ…」 「じゃあ僕もここにいますね。」 ソウと話途中のため、先に帰ってもらおうとしたが、俺が言う前にシュンくんが俺の隣に座る。 「え、あの、シュンくん?」 「ん?」 「先に帰ってていいよ?」 「…僕いたらダメ?」 「えっ、いや、ダメじゃないけど…。」 小首を傾げ、まるでチワワのような瞳を向けてくるもんだから、思わず断り損ねてしまった。 「…ごめん、俺、そろそろ戻るわ。」 「えっ!?」 「ほんとごめんな、折角来てもらったのに。」 「あ、いや、俺こそ来るのが遅くて…。」 「ナオは悪くねぇよ、気にすんな。終わったら連絡するから。じゃーな。」 ポンッと俺の頭に手を置いてから、ソウはバイトに戻っていく。それを見て、シュンくんがバツが悪そうな顔をした。 「なんか、ごめんなさい…。」 「え!?なんでシュンくんが謝るの?シュンくん悪いことしてないから!」 「でも…、」 「俺がチンタラしてたからダメだったんだよ、だから気にしないで!さ、帰ろうか?」 「…うん。」 ソッと差し出した手を、シュンくんは嬉しそうに掴んだ。

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