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Page8:ニートとお茶目さん
帰宅後、風呂を沸かした。
「シュンくん、お風呂先どうぞ。」
母さんが帰ってくるまでに洗濯物や洗い物を片付けたいと思い、今日はシュンくんに先に入ってもらおうと声をかける。
「え、いいんですか?」
「うん、昨日俺先に入ったし!ってかさ、もう家族なんだから、そんな気ばっか遣わないでいいよ?」
「………。」
「あっ、いや、なんか偉そうだった?ご、ごめん!…でも、義理でも兄弟だし、同じ年だからその、敬語とかも別に使わなくていいって言うか、まぁ、直ぐにとは言わないけど…その、あの……。」
敬語じゃない時もあったから、シュンくんは俺と兄弟になる努力みたいなのをしてるって分かってる。でも、やっぱりこうも気を遣われると初めて会った時の事を考えたら居た堪れなくて、逆に申し訳なくなってくるものだ。
「…ご、ごめ…っ、」
「じゃあ、これからはタメ口にするね?」
「へ…?」
「僕も一人っ子だったから少し戸惑っちゃって…。ナオくんも一緒なのにね!じゃあ、お風呂先に入るね!」
「う、うん…!」
謝ろうとした俺の言葉を遮り、シュンくんは笑った。その瞬間、俺たちの距離が少しだけ近くなった気がして、嬉しくなった。
「お風呂ありがとう。次、いいよ。」
「はーい、わかったよ。」
洗濯物を取り込んで洗い物をしていたら、首にタオルをかけたシュンくんに声をかけられ、返事をする。
「あっ、洗い物僕もやるよ。」
「え、あ、大丈夫!気にしないで!」
「え、でも…。」
「ほら、俺ニートだからさ!あははは!」
現役大学生のシュンくんに、ニートなんて言っててなんだか恥ずかしくなったのを、笑って誤魔化す。
「…そっか。」
「うん、それにもう終わったし!…よし、じゃあ俺も風呂入ってくるね。」
「うん。」
あまり深く聞かれずホッとしながら手を拭いて、下着とタオルを持って風呂場へ向かった。
「…あ、そういえばソウって何時にバイト終わるんだろう。」
Tシャツを脱いだ時ふと思い出し、着信がないか携帯を確認すると、画面は不在着信の通知をまだ受け取っていなく、少し安堵する。
そして、お風呂入ってても分かるように、サイレントモードを解除しようと思い、操作しようとした時だった。
「っひゃぁッ!」
「えっ…!?」
「…あっ!?」
半裸でスマホをいじってた俺の背中を、ツーとなぞられ思わず甲高い声を出してしまい、ハッ我に返って振り向くと、驚いた顔でこちらを見るシュンくんがいた。
「ご、ごめん…。」
「い、いや…俺こそ変な声出してごめん…っ、背中とか腰周り弱くて……。」
「そうだったんだ…。ほんとごめん…、えっと、ちょっと遊び心が出ちゃって…。」
「や、全然気にしないで…!むしろ気持ち悪い声聞かせて本当ごめん…。」
「いやいや、そんなことないよ…。」
ペコペコと頭を下げあって、なんだか少し気まずい空気に、お互いが苦笑する。
「えっと…、なんか用だった?」
「あ、うん…!ドライヤーどこかなって思って…。」
「あぁ、それなら洗面台の横にかけて…はい、これリビングでコンセント繋いで使って。」
ドライヤーをシュンくんに渡すと、ありがとうと言ってリビングへ戻っていった。
残された俺は、先ほどのシュンくんの行動に、結構茶目っ気があるんだな〜とぼんやり思う。
「…あれ、そういえば俺何してたっけ。…まぁいいや、風呂入ろ。」
何をしていたかすっかり忘れた俺は、パパッとズボンとパンツを脱いで風呂に入った。
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