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Page13:仲直りのチッス
「ん?答えられないの?」
「い、いいだろ別に!誰と電話してたって!」
「…ふーん?」
「な、んだよ…。」
ジリジリと近付いてくる悪魔に、タジタジと後ずさる俺。耳から離したスマホからは『おーい?』と言うソウの声が聞こえてる。
「く、くるなよ…っ!」
「なんで?」
「なんでって…、なんでくるんだよっ!」
「別に?…ただ、」
ニヤリと怪し気な顔でそう言いかけたシュンくんを見て、その先の言葉をソウに聞かせてはいけないと脳内で警告音が鳴り、急いでスマホを耳に当てる。
「ソ、ソウ、またかけ直…っんむ…?」
が、遅かった。
「……ンンっ!?」
視界が暗くなって、唇の柔らかい感触に目を見開く。
『…ナオ?』
「んぅっ、ンふ…ッ!」
俺にソウと話す隙を与えないかのように、突然唇を塞ぎ、驚きで一瞬固まった俺を見計らってスマホを奪い取った。
「…っんはぁ!!なっ、なん…っなんで…、キスなんか…っ!」
ドンッと肩を押してシュンくんと距離を取り、はぁっはぁっと息を荒げながら、ゴシゴシと唇を拭う。
「お、まえ…ほんと、なにして…っ!」
「なにって、お仕置き?」
「は、はぁっ?」
コテッと小首を傾げて、質問を質問で返すシュンくんに逆に戸惑う。ていうか、そもそもお仕置きされるような事した覚えがないっていうか、お仕置きでキスってどこの少女漫画だよ!なんて、心の中でツッコミを入れた。
「それよりいいの?…通話中だけど?」
「えっ!?…あ、あぁあぁっ!!」
にやっと笑うシュンくんの手元には、通話中の文字が表示されているスマホ。ソウの声は聞こえないが、たぶんきっと、全部聞かれていた。
「いい今のは!今のは違くて…っ!!くそっ!スマホ返せよ!!」
「近寄ると、またキスしちゃうよ〜?」
「〜〜〜っ!!」
焦って取り返そうとする俺をからかうように、スマホをプラプラ見せつける。
変わらない笑顔で"また"の部分を強調するように言われて、ソウにはもう弁解の余地がないし、キスされたくないから近寄れないしで、俺は地団駄を踏む。
「…そういうことだから。」
「あぇ…?」
すると、聞いたことのない低い声が聞こえてパッと顔を上げると、電話越しのソウに話しかけたシュンくんはそのまま電話を切った。
シーンと静まり返るリビングで、俺は今の声の主がシュンくんだったのか?という疑問で頭をいっぱいにして、もしそうだったらなんか凄くおっかない人なのでは…と内心ビクつかせる。
「ナオくん。」
「っ、な、なんだよ…。」
得体の知れない人物と化したシュンくんに名前を呼ばれて、ビクッと肩が上がった。
おっかない人なのかもと思っても、さっきの今で強気な態度を変えるわけにいかず、どもりながらも眉間にしわを寄せながらシュンくんを睨むように見る。
「はい。」
「…え?」
警戒心丸出しの俺に構わず、尻ポケットから何かを取り出し、差し出した。
「二つ食べちゃってごめんね。これ、帰りに買ってきたんだ。」
「…抹茶味…。」
「うん、期間限定みたい。…好きでしょ?」
それは、生チョコブラウニーの抹茶味で、チョコレートと抹茶が大好物の俺にとって魅力的すぎる食べ物。
「うん、好き…。」
単純な俺は、つい数分前の出来事も忘れ、素直にシュンくんから受け取り、口の中を唾液でいっぱいにした。
「…かわいすぎ。」
「え?」
「これで仲直りね?」
「え、なに…んうっ、」
はわ〜と目を輝かせ、ボソリと呟くシュンくんに顔を上げると、その隙を狙ったかのようにチュッとシュンくんの唇が俺の唇に触れて、すぐに離れる。
「さてと、じゃあ僕はレポートやろうかな。机借りるね〜。」
「………。」
まるで何事もなかったかのように、放心状態の俺を放置したまま、シュンくんは鼻歌を歌いながら二階に上がっていった。
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